第30話 旅立ちの日
クラン加入が決定した次の日の夜。僕は父さんと贅沢な料理を囲い、二人での夕食を楽しんでいる。
「それにしても、明といられるのも今日で最後かぁ。明日には高校の寮に移るんだろ?」
そう、僕は明日から高校の寮に移ることになっている。(実は、ダンジョンの探索を早めに切り上げたりして引っ越しの作業をしてたんだよ!)
そして今日は父さんと過ごしてきたこの家にいる最後の日ってわけだ。
「今日で最後って。別に一生会えなくなるわけじゃないんだからさぁ」
だから、僕達は豪華な食べ物を食べて別れを惜しもうとしてるのだ。
「だがなぁ…」
父さんはそう言いながらお酒の入ったコップを手に取り、口に流し込んでいく。
「飲み過ぎだよ、父さん」
「お前と居られるのもあと少しなんだからこれぐらいいいだろ」
普段お酒を飲まない父さんは、今日だけはとお酒を解禁して浴びるように飲んでいる。
「まぁそうだけどね」
そうやって父さんとの時間を過ごしていく。
……夕食を食べ始めてから数時間後。夜も更けて来た頃、僕は夕食の後片付けを終え、自分の部屋に行き、寝床に就こうとしていた。
食卓には飲み過ぎて、寝落ちしてしまった父さんが突っ伏している。
「毛布かけてあげないと」
春になり、暖かくなってきたとはいえ体調を崩してしまうかもしれない。
僕は毛布を持ってきて、父さんに掛けてから自分の部屋に戻り、ベットへと入り込む。
「明日から新たな生活が始まるのかぁ」
胸に少量の期待と多大な不安を抱いて眠りに着く。
―――――――――
僕は食卓で目を覚ます。
どうやらお酒を飲み過ぎたみたいで食べ終わったまま寝てしまったようだ。
体を起こして、動こうとするとかけてあった毛布がパサッと音を立て、落ちていく。
多分明がかけたであろう毛布を拾って、椅子にかけておく。
(明…大きくなったもんだ。明日からは僕から離れて遠くへ行ってしまう)
成長した自分の息子を思い浮かべながら、僕はリビング・ダイニングから出て僕の寝室の隣の部屋に入る。
そこには僕の妻であり、明の母である水谷 亜里沙の遺影が仏壇に飾ってある。
僕は仏壇の前に座り、おりんを鳴らす。
チーンという音が静かな部屋に響き、反響する。
(亜里沙、明は自分の道を自分の意思で選んで進もうとしているよ)
僕は手を合わせ、冥界に居るであろう亜里沙に届くよう強く祈る。
(もうあの頃の明じゃないんだってハッキリと感じるよ。だからさ、もう明を離してやってくれ、自分の道を進ませてあげてくれ)
念じながら昔を思い出す。
(そうだ、もうあの頃とは違うんだ。だからね?僕ら親は1歩引いて子を見守っていこうよ)
僕は立ち上がって、部屋を後にする。
時計を見るともう3:00を指している。
「今日はもう寝るか…」
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