16 王都到着
SIDE:ADMIN
メリアたち一行を乗せた飛竜籠は夜通し飛び続け、朝日が昇る頃になってデルフィア王国の王都、デルフィニア上空へと到達した。
そして徐々に高度を下げ、飛竜籠の発着場となっている王城の中庭へと降り立つのであった。
物見の塔から飛竜籠の接近を確認していた見張り番からの報告を受け、早朝にもかかわらず出迎えの者が中庭に出てくる。
その多くは夜勤の騎士や兵士のようだが、唯一人だけ身なりの良い貴族らしき人物が混じっていた。
SIDE:グレン
ようやく王都に到着することができた。
一先ずはその事にほっとするが、大変なのはむしろこれからだろう。
飛竜籠を降りた俺たちを出迎えたのは、所属を同じくする騎士団の仲間たちと、もう一人……
「おお……グレン!!よくぞ無事に帰って来た!」
「父上、ありがとうございます。わざわざこのような早朝から……」
「アグレイブを発ったと言う連絡は受けていたからな。そろそろだろうと思って待っていたのだ」
魔導通信か。
おそらく、あの中隊長が気を利かせてくれたのだろうが……特命部隊の行動を報告されるとは思わなかった。
まぁ、特に口止めもしてなかったから、仕方がないか。
……いや、あるいは?
「して、首尾はどうだったのだ?」
そう聞かれた俺は、周りの者に聞こえないように父の耳元で小声で伝える。
「ふむ……何と!?そ、それで……?うむ……なるほど……そうか、分かった」
俺から事の経緯を聞いた父は、最初は驚き戸惑うものの直ぐに気を取り直した。
そして、メリアに向き直って言う。
「メリアどの、と申されましたか。この度は、遠路遥々お越し下さり……デルフィアの臣として感謝申し上げます。私はグレンの父でハースナー公爵家当主のギルフォードと申します」
父から挨拶を受けたメリアは、落ち着いて挨拶を返す。
「これはご丁寧に……私はメリアと言います。何とか期待に応えられるように力を尽くそうと思います。……それにしても、グレン?」
と、彼女は少し責めるような目で俺の方を見る。
……あ〜、家の事を言ってなかったからか?
「あなた、公爵家の出身だったのね」
「え、ええ……その、黙っていて申し訳ありませんでした。ただ、任務中は一介の騎士ですので……」
本当のところは、何となく彼女に距離を置かれるのを恐れたから……と言うのは秘密にしておく。
「ふふ……本当は、多分それくらい高位の貴族家出身だろうな、とは思っていたから驚きはないのだけど。あなた、凄く育ちが良さそうだもの」
「う……そうですか?」
「そうよ」
はぁ……彼女にはお見通しだったか。
しかし、それで態度を変えないあたり肝が座ってるというか何というか……俺にとっては嬉しいことだが。
「ほぅ……グレン、お前、彼女とは随分仲良くなったのだな?」
「……まぁ、そうですね」
こそっと耳打ちしてきた父の目には、何だか誂うような色があって落ち着かない気分になる。
取りあえずは多くは語らずに濁しておいた。
SIDE:メリア
グレンの父、ギルフォード公爵に案内されて王城の中を進む。
公爵とグレン、私、イェニーの四人だ。
カールなどの他のグレン隊の面々は解散して、所属部署へと戻っていったようだ。
上空から見下ろした時にはピンとこなかったが、こうして延々と歩いても目的地に着かないところを見ると、やはり相当な広さなのだろう。
王城の廊下は絢爛豪華と言うよりは、質実剛健という感じだ。
だが、無骨というわけでもなく、品のある調度品が適度に配置され、落ち着いた雰囲気が好ましいところだ。
お上りさんの如くキョロキョロ周りを観察しながら歩いていくと、ようやく目的地に到着したようだ。
「まだ朝の早い時間ゆえ、暫しこちらで旅の疲れを癒やして頂きたい。その間は私の方で各方面との調整をして参りましょう。グレン、お前も一緒に来てくれ」
「はい。……ではメリア、また後ほど。イェニー、護衛は頼みましたよ」
「はっ!」
「……なるべく早く診察が出来るようお願いします」
いちいち段取りを踏まなければ患者に会うことすら出来ないのをもどかしく思うが……ここは彼らにお願いするしかなかった。
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