ハーフリングでも出来る!異世界転生のすすめ!!〜最弱の小人族(ハーフリング)に転生したけどゲームでは当たり前だった知識を誰も知らなかったので楽々成り上ります〜
第9話,碌でもない村の碌でもない子供(2)
第9話,碌でもない村の碌でもない子供(2)
小人族の連中は基本的に俺らには構わない。
商会の竜車が着くとそこに集まり欲しいものを買い、奴らの作る
だがあのガキは違った。
「おじさん達は何か売ったりしないんですか?」
最初俺らに話しかけられてると思わなかった。
それは話しかけられると思ってなかったのもそうだが、そもそも視界に入ってすらいなかったからだ。
何せチビばかりの小人族の中でもまだ赤子も赤子なサイズのガキだったからだ。
「…いや、俺達は護衛だからそう言うんじゃねぇんだよ。あとお兄さんな」
見ればガキのくせに身なりが良い。
普通こういう農村のガキってのはあんまり良い服着てないことが多い。
何せ赤ん坊ってのはすぐに大きさが変わるから、良い服を仕立ててもちょっとしたらもう着れなくなっちまう。
それに小さい服ってのはそれはそれで金がかかる。
そうなると基本ある程度大きくなるまでは麻布に穴開けた様な
にも関わらず、見るからに高そうな布で丁寧に仕立てられた服を着てるコイツは、差し詰めこの村の有力者の子供ってところだろう。
小人族に関わりたく無いとは言え依頼人の客、それも有力者の縁者を無碍に扱ったんじゃ宜しく無い事態になりそうだ。
俺達は目線で少しの間このガキの話し相手を押し付けあった結果、押し負けた俺が渋々口を開いた。
まぁ、なんぼ何でも赤ん坊にビクつくほど俺もビビリじゃねぇ。
「成程!と言うことはおじさんは戦闘職と言うわけですね!お、腰に挿してるのはロングソードですか。てことは『剣士』か『戦士』系のスキルツリーを持ってるわけですね〜。装備の感じから見てどっちかって言うと戦士よりですかね?あ、待ってください!当てて見せます!!
何だこのガキはっ!
あとなんだその動きは!!
突然堰を切ったように話し始めたかと思えば、その間ずっとズリズリとすり足で周囲をウロチョロし始めたぞ。
それにゾッとする事にこいつが言ってる事は当たっていると言う事だ。
俺は種族ツリーと戦士ツリーから成る派生職である鱗鎧戦士のスキルツリーを持っている。
ロングソードを選んだのは防御スキルに幅を持たせる為だ。
後半は意味がわからなかったが、チラリと装備を見ただけでそこまで分かるやつなど見たことがない。
そもそもスキルなんて物は他人に教える物じゃ無いし、まして種族ツリーが絡む様な特殊な
つまりこのガキの言動は何から何までおかしいという事だ。
あとオジサンじゃねぇ。
「お前、なんでそんな事知ってやがる。それに何だその動きは」
「何でってそりゃ知ってる物は知ってるんですよ。しょうがないじゃ無いですか、生まれた時から知ってるんですから。あとこれは『歩法』のスキルツリーを取得する為にすり足で歩いて距離を稼いでるんです。24時間の間にすり足で合計5キロ歩かないとなんで。僕の計算だともうそろそろなはずなんですよね〜」
何を言ってるのか全然わからん!取り敢えずこいつはヤバい奴だ!!
関わらない方がいい。
思わず腰の剣に手が伸びそうになるのを何とか堪える。
周囲の仲間達も只事じゃ無い雰囲気に遠巻きにしている。
この時の俺はこのガキに関わるのはやめようと思った。
得体の知れない連中の中でも一等得体の知れないガキだったからだ。
それに護衛と言っても暇じゃ無い。
現地に着いても周囲を警戒しないわけにはいかないし、商会が売り買いした荷を竜車に運び入れるなんて事もする。
忙しいフリをしてこのガキの事を撒こうと、俺は普段以上に荷物を弄った。
しかしガキは飽きもせずにズリズリとすり足で着いてきてはよく分からん事を話し続けた。
なるべく話を聞かない様にしていたが、暫く俺が荷物を動かしていると急に黙り込んだ。
漸く飽きたかと思って安堵した時、コイツはまた話し始めた。
「見てる限りでは、オジサンはステータスアップ系のスキルツリーは持ってないんですか?」
いい加減無視するのもキツくなってたのもあるが、内容が内容だったんでつい答えてしまった。
「ハッ。あのなぁ、どこで聞きかじってきたか知らなねぇがスキルツリーってのはそんなに簡単なもんじゃねぇんだよ。そう言うのは貴族様とか一部の専門職の連中だけが持ってる門外不出のものなんだよ。ステータスアップのスキルツリーだ?持てるもんなら教えて欲しいぜ。あとオジサンじゃねぇっつってんだろ!」
ガキ相手に少々大人気ない事を言う様だが、こういうガキには早めに現実ってもんを教えといた方がいい。
だがそのガキは俺がそう言うとキョトンとした顔で見返して、事も無げに言い放った。
「え?そんなに難しい事じゃ無いですよ。教えましょうか?」
一瞬何を言ってるのかわからなかった。
だがすぐにその意味を理解して、俺は言い返そうとした。
そんな事出来るわけあるか、と。
しかしそう言う前にコイツは「あっ」と声を上げた。
「『歩法』のスキルツリーが手に入りました!」
そう言って再び目の前でまたすり足をやり始めた。
唐突に何言ってんだこいつ?
これまでと何も変わら…いや、まて。
そこでおかしな事に気づいた。
音がしない。
さっきまで最早耳に残るほど立てていたズリズリという音が一切しないのだ。
それどころか地面に足を擦った後も残っていない。
それはいつか見た
スキルってのは望んだからと言ってそう簡単に手に入る物じゃ無い。
一部の才能ある奴らや生まれの違う連中の特権だ。
だが、目の前のこの光景はなんだ?
確かにコイツはさっきまでこんなスキル使ってなかった。
しかし今はそうじゃ無い。
じゃあ本当にコイツは今目の前でこのスキルを手に入れたのか?
「ね?簡単ですよ?取っちゃいましょうよ、ステータスアップ」
呆然としている俺に声を掛けるガキに、俺は言葉もなく頷いた。
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