第18話

「今回は霊災に遭わなかったようですね」

 いきなりの挨拶がそれだった。

 公平はどうも片桐の事は好きになれなかった。

 でも一応は心配してくれたので、無視するわけにはいかなかった。

「片桐さんこんにちは。ご心配、痛み入ります」

 タバコはあえて消さなかった。これぐらいの振る舞いは許してほしかった。

 母の事を思い出したキッカケを与えた人物だからだ。一種の意趣返しだった。

 もう関わらないでほしいという気持ちだけが積み重なる。

 いい加減、メンタルを削るのは保護活動だけで勘弁してほしかった。煩わしい人間関係に振り回されたくなかった。

 とにかく今は、思い出した母の影を心の中から消す事だけを願っていた。

 雨音が屋根を打つ音が大きくなった。

 雨は本降りになりそうだ。

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