Day.12 スイカ
地平線の果てまでスイカ畑。
僕の目の前にある道以外、全てがスイカ畑の世界に僕は立っていた。
空は快晴爽やか青い空のはずなのに、蒼が眩しすぎて何だか恐ろしい。
畑のスイカは黒皮スイカだった。
イラストで描くならこう描くだろうというシマシマのスイカではない、真っ黒い皮のスイカ。これを切って中の赤い部分を見ると、凄く色に対比があって印象的なんだよね。
どこまでも広がるスイカ畑。
広がりすぎて世界が僕とスイカだけになってしまったかのような。
人間が、スイカになってしまったかの、ような?
ゾワリと背筋に冷たいものが走る。
黒々としたスイカ。正に大きさが人の頭のようじゃないか。
風もないのにスイカ畑が揺れる。ざわり、ざわり。
違う。揺れているんじゃない。
スイカが振り向こうとしている。顔をボクに見せようと。
「サトウ君」
スイカから目が離せなくなっていた僕の意識が呼び戻される。
「ヒトミさん……?」
道に立っていたのは、まさしくヒトミさんだった。
良かった。ヒトミさんはスイカになっていなかった。
厳しい表情をしても綺麗な顔をしたヒトミさんに僕は手を引かれる。
ヒトミさんが呟く。
「スイカをみたら振り向くな。振り向いたら自分もスイカになるよ」
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