第3話 ピックアップガチャを引いてみる


「拷問道具って……」


 そんな物騒なピックアップあるのか。

 ログインボーナスとかで、ガチャは引ける。

 だが、どうしたもんか。


「考えていたところで仕方ないよな……」


 ガチャには種類があった。


 ・最高レアが絶対出るガチャ(ただし課金限定)。

 ・ピックアップガチャ。

 ・ノーマルガチャ。


 この三種類しかないらしい。


 課金ガチャは論外。

 やるつもりは今のところ一切ない。


 だから、回すとしたらピックアップガチャか、ノーマルガチャなのだが、最早考えるまでもない。


「回すならピックアップガチャだよな」


 数多のアプリをやってきた俺は、どっちのガチャを回すべきかなんて分かり切っている。

 絶対にピックアップガチャだ。


 ノーマルガチャとピックアップガチャの中身は大して変わらない。

 違いがあるとすれば、ピックアップガチャの方が期間限定アイテムが出るってことだ。


 スマホアプリ初心者の時はそれを知らずに、ノーマルガチャばかり回して後々後悔したものだ。

 ピックアップガチャでしか得られない期間限定アイテムには特別な力がある。

 だが、そのアイテムを手に入れられるのは大体一年に一回と決まっていることが多い。


 だから後悔しないようにここはピックアップガチャを選ぶべきなのだ。

 拷問道具とか物騒な単語が出ていても、引かないと後悔する。


「えー、と」


 ガチャを引くをタップすると、それなりの演出があった。

 玉が10個出てきて、色が黄色になったり、茶色になったりする。

 これが金色だったらSSR確定とか、そんななんだろうな。


 演出がないのでスキップボタンを押すと、結果だけが表示される。


【血塗れのロウソク☆】

【太い縄☆☆】

【血塗れのロウソク☆】

【錆びた手錠☆】

【爪剥ぎ☆☆☆】

【針の短い注射☆】

【丈夫な木槌☆】

【短い縄☆】

【血濡れのロウソク☆】

【愛用のチェーンソー☆☆☆☆】


 想像以上に物騒な単語の羅列に引く。

 絵も妙にリアルに描かれていて気持ちが悪かった。

 普通、こういうのってデフォルメで描かれると思うんだけど、本物に見える。


「拷問道具ピックアップっていうか、ロウソクピックアップじゃないの?」


 俺が【血濡れのロウソク】をタップすると、


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 赤いロウソク。

 返り血で赤く染まったロウソク。

 対象の任意の場所にロウソクを垂らすことができる。

 消耗品の為、20回だけ使える道具。


 使用限度回数(20/20)

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 なんか説明が出てきた。


「し、使用限度?」


 こ、これは、ガチャをかなり回さないといけない匂いがビンビンしてきた。

 レア度が低いせいか、使用限度のあるアイテムが出るガチャのアプリなんて誰もしないぞ。

 道理でDL数少ないはずだよ。


「この☆4つあるのが最高レアか、その一歩手前ってところなのかな?」


 チェーンソーをタップしてみると、

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 奴が愛用していたチェーンソーのレプリカ品。

 時間をかければ対象の相手の骨も斬れます。

 ただし欠損した箇所を戻すには回復上位アイテムが必要なので、使い時は慎重に。


 自分が嫌いな奴をチェーンソーで斬ってスカッとしよう!

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ポップな口調の割には、殺伐としている。

 このゲームをやっている人は、心が病んでいる人ばかりなんじゃないだろうか。


「よく分からないな……。使ってみるしかないか……」


 さっきの男子生徒の所に戻ってみて、


『道具』


 ――っていう項目をタップすると、選択肢が出る。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【丈夫な木槌☆】

【錆びた手錠☆】

【血塗れのロウソク☆】×3

【針の短い注射☆】

【短い縄☆】

【太い縄☆☆】

【爪剥ぎ☆☆☆】

【愛用のチェーンソー☆☆☆☆】

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 さっきガチャで得たアイテムが、ズラリと並んでいる。

 レアリティ順に並んでいて、色々とソートできるみたいだ。

 まあ、今はどの並び方がいいか分からないので、このままにしておこう。


「とりあえず、木槌からいくか」


 木槌をタップすると、木槌が出現する。

 それをタッチしながら横に振ると、


『ウワッ、アアアアッ!!』


 と、妙にリアルな悲鳴を男が上げる。

 何度か木槌を振り回すと、


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【好感度はこれ以上下がりません。まだ続けますか?】


 →はい

  いいえ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 という表示が出て来た。


 俺はなんとなくいいえをタップする。


「好感度は0か……」


 なんだろう。

 やってみた感想だけど、何が面白いのかよく分からない。


 今のところ、誰かの写真を撮って拷問して、嫌いな人が悲鳴を上げるのを見て愉しむ遊びができることしか分からない。


 もうちょっとリアルに干渉できるアプリかと思ったけど、どうやら二次元の世界で満足するタイプのアプリらしい。


 まあ、当たり前か。

 そんな便利なアプリある訳ない。

 もっと好感度上げる為の画期的なアプリみたいなものを期待したけど無意味だ、こんなことやっていても。


「最後に……」


 淡島さんを見て終わろう。

 好感度を上げ下げするのを見るだけでも面白いかも知れない。

 だけど、


「え?」


 タップすると表示画面が歪んでいた。

 所々文字化けもしている。


「なんだ、バグか?」


 アプリを消して立ち上げても、同じ表示になる。

 他の人の画面へいったら普通の表示になっている。

 何故か淡島さんの表示だけがおかしいままだ。


 人気のないアプリだからちゃんとデバック作業もできていないのだろう。

 しかし、よりにもよって淡島さんの画面だけおかしいなんて運が悪い。


 それに、肝心の好感度の数値のところがモザイクがかっているみたいなバグが発生していて、何も分からなかった。


「好感度不明、か」


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