第40話 飲食店 R ②【梶原さん】

 クルー(アルバイトの呼び名)が話しかけてきた。

「悟空さん、女性でしょ?制服着たら?」


「あっ はい」


「私、梶原、宜しくね。制服準備する」


「仙人でも、毛むくじゃらでも、制服きれるんだ~。うれしい」


「よかったですね。私なんか蝶ネクタイだけですよ」


「雉神、料理の提供は羽でも出来るの?」


「それなんですけど台車に載せて運ぶんで問題ないそうです」


「そしたらテーブルNoとハンディ(注文を取る機械)と料理名と会計が出来れば半人前じゃない」


雉神(先程の梶原さんがマスターキーを持っていました)


悟空(そう。金庫の中は確認したいな。マスターキーのスペア作れないかな?)


(マスターキーは留守の時は金庫内保管だと思います)


(なるほど。いや自殺者の改ざん前のタイムシートがあると思ってね)



「悟空さん、これ着て見てください」


「は~い、ありがとうございます」




「あ?!ダメだ。しっぽの穴がない」


「あ~~そうか。私、裁縫してくるから今日は上だけ着てください」


「う~~なんてやさしいの」


「初めはみんな緊張するからね」


「はい」


「悟空さん、いくつですか?」


「4516歳くらいです」


「??あ~~そうですか、年上ですね!」


「梶原さんはいくつですか?」


「20歳、もうあばさんよ」


「もっと若い人がいるのですか?」


「16」


「え?」


「もうピチピチしてる」


「わかります。私もつい最近まで16でしたから!」


「でも4516歳にしては若い!」


「そうですか~うれしい。腰にぶら下げているの何ですか?」


「あ?!これ、これはまだ悟空さんは知らなくていいものよ」


「は~い」

(上手くかわされた!)


「今、困っていること何ですか?」


「料理名とハンディです」


「料理名はメニューブックを持って帰っていいから覚えるしかないわね!」


「はい」


「あとハンディか?少しトレーニングしようか?」


「え?梶原さんがやってくれるんですか?」


「どうして?」


「だって他のクルーが梶原さんは店長の次に偉いっていってました!」


「偉い……そんなのうそよ。私なんかより仕事がさばけて、みんなに優しく出来たのは恭子よ」


「恭子さん?」


「今はいない。転勤したからね!さあ、やりましょう」


「はい、お願いします」


「ハンディは取り合えずお客様のご注文のスピードで押してしまうの。そしてご注文をくりかえしますと言って自分のペースで繰り返していくのがこつよ」


「わかりやすい」


 雉神は必死にくちばしで押していた。


 「河上 恭子」自殺者の名前だ。


 加重労働での自殺であれば梶原も他のクルーもわかっていたはずだ。自殺か他殺かの原因は他にある可能性が高いと悟空は予想していた。




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