第十三話 ファーストコンタクト③

「ここからは俺が相手だ!」


 言って、オズはゴブリンから少女を庇う様に立つ。

 すると。


「あ、あなた様は……?」


 と、そんなことを言ってくる少女。

 オズはゴブリンを睨んだまま、そんな彼女へと言う。


「正直、守れる自信はない! でも、死んでも奴らの気を引いてみせる! きみはその間に逃げてくれ!」


「で、ですが……っ」


「いいから! 今の俺には余裕がない! 頼むから言う通りにしてくれ!」


「……っ」


 と、ビクッとした様子の少女。

 けれど、彼女はなんとかと言った様子で、しっかりと立ち上がってくれる。


 となれば。

 オズがすることは一つのみ。


(ゴブリンの数は五匹。問題はどうやって、こいつらの気をひくかだな)


 先も考えた通り、ゴブリンは頭がいい。

 ゴブリンが『あの少女を目的』としてる以上、相当のことをしなければ、オズを目的にしてくれないに違いない。


(となれば、相応のダメージを与えるしかない)


 それによってゴブリンの恨みを買うのだ。

 けれどそれにもまた問題がある。


 などと。

 そんなことを考えたのち、オズは自らの右手に握られたモノを見る。


(こんな木の枝でなんとかなるのか?)


 オズのジョブはカラテマスターだ。

 素手での戦いにおいてなら、ゴブリンはおろかそこらのドラゴンですら瞬殺する自信がある。

 けれど、現在それは不可能だ。


 スキル『腹パン』と、スキル『不殺』のせいで。


 それ故に今回の戦闘は、木の枝を使うしかない。

 この枝ならば、スキル『腹パン』に記載されている『肉弾攻撃』に入らないと考えられるからだ。


(スキル『不殺』のせいで、結局ゴブリンを倒す事はできないけど、ある程度のダメージは与えられる)


 本当にそうか?


 と、オズの脳裏にそんな考えが過ぎる。

 なんせ、オズは木の枝——言うなれば剣の類を使って戦闘をしたことがない。


 言うなれば。

 剣技においてはど素人。

 しかも、咄嗟に殴ったり蹴ったりしない様に注意しなければならないのだ。


(うだうだ考えても仕方ない……とにかく、やるしかない!)


 と、オズがそんなことを考えたまさにその時。

 ゴブリンが一斉に襲いかかってきたのだった。

 

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