園長との面会②
さて本題に入りましょうという園長の言葉からフェルドたちがやるべき任務の詳細が言い渡されることになる。内容はティラシェイド王子より告げられたものとほぼ同じだ。一点違うことがあるとするならば先程出くわした妖魔のことである。
クライシスらしき物を確認という情報はあったが、街に到着してすぐに妖魔と乱闘になるとは思ってもいなかったからだ。
「どういうことなんですか?」
ある程度のヘレンから説明を受けた後にエドルフが尋ねた。
「先ほども言ったようにクライシスが確認されました。それはこの学園の生徒を襲った妖魔からだったのです」
「まあ確かにあの妖魔にもクライシスの匂いがクンクンしたなあ。まじで気持ち悪い匂いだぜ」
フェルドがいまにも吐きそうだといわんばかりに口と鼻を塞いでみせた。
「クライシスの影響で妖魔が暴走していると考えて良いのでしょうか?」
ヘレンは頷いた。
「わたしはそう見ています」
「あんたってそういうのわかるの?」
「そうですね」
ヘレンは女性の像を見る。
「聖母・アマテラスがいうのです」
アマテラスというのは、背後のある女性の像の名前だ。かつては竜背皇国にいたとされる神で、竜背皇国をつくった後にアウルティア大陸を創造したとされる女神だ。まあ、伝説が本当かどうかはわからないが、人々の中にはアマテラスがかつて創造した古の大地・この世界のどこかに存在する神々の土地“タカマガハラ”の存在を信じる者は多い。
竜背皇国をはじめとするタカマガハラ信仰がアウルティア大陸のいたるところに張り巡らされている。
フェルドのいたニート教会もその一つだ。
「あんたは、ウズメなのか?」
ウズメとは、タカマガハラ信仰の修道士の中でも最高位の“神官”のことで、神の言葉を聞くことができるとされている。
「この街に魔王の残党が出現するという予言があったのです。その直後に妖魔の暴走。クライシスを感じない私でも想像がつきます」
クライシスを感じる。そのこともまたクライシスハンターになる条件の一つだ。とはいえども特別な能力というわけではなく、魔力を持つものがある程度の修行さえすればできる所要でもある。
「そういうことですか。でもこれは個人的な疑問なのですがよろしいでしょうか?」
「なにか?」
「あのですね。クライシスの捜査の依頼についてなのですが……。なぜ学園長が依頼することになったのでしょうか? 街から依頼が普通ではないでしょうか?」
そういわれるとそうだ。
クライシスハンターへの依頼は基本各自治体が行うことがほとんどだ。
クライシスが確認された場合、一度その自治体へ報告され、それから各自治体にいる騎士団の判断により判断した場合に国へと依頼が届くシステムになっている。普通ならば、自治体を通さずに依頼要請が国にくるということはめったにない。しかし、今回に限っては、直接ミディア学園からの依頼が来ている。いったい、どういうことなのか疑問に思うのも仕方がない。
「そのことに関してですが……」
ヘレンは話を続けた。
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