第5話 「空き地🍁」
夕焼けに染まる黄昏の夕刻、真っ暗くなる一歩手前、喫茶店近くの空き地に僕は到着する。
猫の集まる場所をもう5箇所は、見つけていて、これが6つ目だった。
その空き地には、草が程よく生い茂り、奥には何層も鉄材が積まれている。その手前には、灰色のコンクリート土管が4つある。土管は四角い形の土管が3列で、2段ずつに積まれていた。土管周辺に、野良猫が4匹いる。何匹かが、僕に気づいて静かに鳴く。アメリカンショートヘアらしき猫はいないように見える。黒、白、三毛、灰色かな…。
「あっ」
3匹が、ササッと逃げてしまう。
「だよなあ…」
僕は、残った黒い猫を見つめながら、鮭カンを開けると、指で、缶の横を「カンカン」と音を出して叩きながら、しゃがんだ。
すると、積まれた鉄材の前に寝そべっていた、黒い猫が近づいてくる。
「ニャ~ン。ニャ~ン」
「よしよし。食べていいよ。黒猫ちゃん」
「………ニャー、ニャー………」
何処からか、今度は、高い猫の鳴き声である。声と同時に、3列ある真ん中の土管の影から、スルスルっとアメリカンショートヘアが、飛び出して来る。
俺は驚く。野良猫の中で、アメリカンショートヘアを発見したのがこのとき多分初めてなのである。
目の前には、鮭缶を泣きながら、食べる黒い猫と、アメリカンショートヘアが居る。なんともせわしく忙しい食事である。アメリカンショートヘアをじっと見る。
尻尾はきれいで傷はなく首輪も無かった。
「…やっぱ違うかあ」
悲しく呟いた。諦めて、缶をおいたまま、その場を去る。黄昏の空は、いつの間にか、日が落ちて暗くなっていた。
そして、力なくペダルを踏み込み、事務所まで自転車を走らせるのである。
「プルルルルルルル。プルルルルルル」
「はい。木村です。あ、たかちゃんか」
「木村さん、だめっす。木村さんに言われた地図の猫の広場を5箇所見ましたけど、居ませんでした。聞き込みもゼロです」
「すまんな。ありがとう。もう2週間経ったから東雲さんに継続するか聞いてみてだな。後はちょっと反省会をしよう。報告書を作らないと」
「今日は、たかちゃんこれから時間あるかい?」
「はあ」
「じゃあ、皆で焼き鳥大吾に集まって軽く反省会と、意見交換だな。何時にする?」
「もうお腹空きましたねえ一」
「じゃあ、ソッコー行こう。桃介と、正和と、ヒカルちゃんに電話しとくよ。じゃあ18時に店で。あ、でも、俺は遅くは飲まないよ。美幸の家に深夜行くから」
そう言って俺は電話を切った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます