第46話 安吾たちの夜は騒がしい
部屋に入った瞬間、俺はオルガマリーをベッドに寝かせた。
すると彼女は俺の腕を引いて自分の胸に俺の顔を埋めさせた…………あぁ〜〜〜〜♡
異世界にきて1ヶ月あまり!
セックスどころかマスターベーションすらできなかった!
ランスロット邸についてからも監視兼護衛役みたいなオッサンが寝る時はべったりで一人遊びもできなかったからなあ……
いやー、やっぱ運って溜めとくもんだな!
溜まってるのはそれだけじゃないがな!
おっと、イカンイカン。
穏やかで優しいアンゴさんのキャラが崩れちまうところだった。
することが目的ではないが、そこまでいけば篭絡は完璧!
さあ、現代日本のエロ文化と少々の実践経験で磨いた我がテクニックを受けてみろ!
息巻いて俺は彼女の衣服を脱がせるとド迫力の裸体があらわになった。
こんなもん俺が独り占めしていいんですか?
ルーブルとかに飾らなきゃいけないヤツじゃないですか?
って言いたくなるほど完璧な肉体美だ。
猟犬だなんてもったいない。
俺が権力者なら手元に置いてずっと可愛がるのに。
「あまりしっかり見ないでくれ……キズや火傷の跡とかがあるから」
彼女の言葉どおり至るところに消えずに残った傷跡がある。
たしかにお姫様にはないものだろうな。
でもな、
「んっ!? な、なにを……」
「愛しい女の身体についてるものならキズすら愛したくなるだろ」
俺は彼女の全身のキズにキスをする。
「やめ……ダメぇ……」
とか言いながら抵抗しないオルガマリー。
女傑めいた彼女が恥じらう様子に俺は興奮しきった。
「愛してるよ、マリーさん」
「アンゴ…………私は、わたしは————」
何か言いたげな彼女の唇を貪るように奪い、そのあとメチャクチャセックスした……かった。
「いけませんわーーー!! アンゴさん!!」
バーーン! とクローゼットを開けて飛び出してきたのは紫髪のお嬢様!
「シンシアぁっ!? え、なぜ」
何故そんなところに隠れてた! と言おうと思ったがそれよりも早く彼女の怒声が俺を撃つ。
「なんてはしたないことしてるんですか!? 猟犬と呼ばれるオルガマリーさんを倒すのではなく仲良くなって追跡をやめさせるという作戦は聞いておりましたが、まさか子作りをするなんて卑劣極まりありませんことよ!!」
「やめろ! 黙るんだ!」
「いいえ! 私も女性として言わせていただきます! アンゴさん! あなたは最低です! たしかに身重の身体にすれば激しい運動はできず追跡の手は鈍るでしょう!」
「そんな発想はなかったわ!! 鬼畜の所業だろそれ!!」
「ではオルガマリーさんとの間に産まれた子の認知はなさいますの!?」
「では、じゃねーよ!! もう黙れ!! 作戦もムードもメッチャクチャだよ!!」
俺とシンシアがどうしようもない問答をしていると、背後から「ふぅ……」と小さい溜息が聴こえた。
その直後、俺の首に引き伸ばされたベッドのシーツがかけられた。
「グギッ!?」
咄嗟に両手首を首とシーツの間に挿し入れて首が締まるのを防ぐ、が締め付ける力の凄まじさに閉口した。
どう考えても女の腕力じゃない。
まるでランスロットのような…………運命持ちってこういうことか!?
「フフ……シンシア嬢。あなたの顔を見て素面に戻れたよ。どうやら私は酔い過ぎていたようだ!」
さらに締まる力が強まる!
窒息死狙いというよりこのまま首の骨をへし折るつもりか!?
「ま……待て……争うつもりはない……」
「ならばすぐ死ね! あるまじき痴態を見られただけでもお前は殺す必要がある!!」
「キャーーー!! アンゴさん!! 今しばらく頑張ってくださいまし!!」
シンシアぁっ!!
元はと言えばお前がっ————ん?
シンシアが、壁際の棚に置かれた、グラスを手に取って、
「とりゃあああああっ!!」
こちらに向かって投げてきた!
俺を援護するつもりなのだろうけどその角度では————
バリィーーーーン!!
グラスがジグソーパズルのようにバラバラに砕け散る。
俺の頭に当たって……
「……オホホホ、失礼。手元が狂いましたわ」
「えぇ……」
あまりの珍事にオルガマリーも言葉を失くし、俺を殺そうとする手の力が緩んだ。
すかさず俺はオルガマリーをベッドに押し倒す。
「お、落ち着いて聞いてくれ! 素性を隠したのはたしかに欺くためだがアンタを害するつもりはない!」
「黙れ! コッチは十分害されている! その気にさせておいて————あひんっ♡」
殴っても蹴っても先ほどの力を見る限り効き目は薄そうだからとやぶれかぶれで敏感なところを優しく撫でてみた。
効果は抜群だった。
「話を聞いてくれ!!」
サワサワ……
「んっ♡ そんなのぉ……アンっ♡」
ビクンビクン♡
「聞いてくれないなら、こうだ!」
ちゅぷちゅぷ……
「はぁんっ♡ きかないっ♡ きかないからっ♡」
楽しんでるだけではありません。
女戦士を押さえつけているのです。
しかし、明らかに力弱ってないか……この猟犬。
「アンゴさん! 助太刀致しますわっ!」
せっかく優勢に立ったところでお嬢様ふたたび!!
「やめろっ! もう何もするなっ!!」
俺の叫びも虚しく、シンシアはオルガマリーが脱ぎ捨てた服をまさぐり長い針のような武器を取り出した。
てかあんなもん仕込んでたの!? コワッ!?
シンシアが針を取り出したのを見てオルガマリーも焦り出した。
「らめぇ♡ じゃなくて!! ダメだ! 素人がそれを扱うなっ!」
「今さら許しを乞うても遅すぎましてよ! お覚悟あそばせ!!」
針をぐっと握りしめて投げつけようとするシンシア————プスっ。
「い————いってえええええええですわっ!! な、なんてこと!? 針の側面にもトゲトゲがっ!?」
飛び上がって痛がるシンシアを見てオルガマリーが怒鳴る。
「言わんこっちゃない! それは返しだ!! 毒針が抜けないように付けてある仕掛けだ!!」
「お毒針ですって!? ア、ア、アンゴさーん!! お助けくださいまし!!」
「もうっ!! バカバカバカバカバカバカ!!」
俺は大慌てでシンシアに駆け寄り指を掴む。
白い手のひらや指先に飛び散るようについた傷から赤い血の粒が浮き上がっている。
こういう時は……これだ。
ちゅーーーーっ。
「アハンっ♡ アンゴさん!? いきなり何をっ!?」
「ぺっ! 毒吸い出してんだよ! 手を広げろ!」
シンシアの手の傷に唇を当てて勢いよく吸い出して吐く。
それを繰り返す。
「ンっ♡ く、くすぐったいですわ! あっ♡」
「ぺっ! 変な声出すな! お前ちょっと楽しんでるだろ!」
「そ、そんなことぉぉっ♡ あー! ダメですわ! 指先はダメでしてよ!」
てんやわんやしながらシンシアのすべての傷口から血を吸い出した。
荒い息をしているがシンシアはなんともなさそうだ。
「ハァハァ……アンゴさんったらいやですわ……がっつきすぎでしてよ。まるで母親の乳房に吸いつく赤ん坊のよう」
「それが救命行為に使う表現かぁーーーーー!!」
お楽しみを邪魔されてもツボで頭割られても迷うことなく命を救いに行ったのにひでえ言われようだ。
「心配するな。その毒は痺れ薬だからな。命に別状はない」
「なんだ……そういうことは先に言ってよ、マリ————」
…………完全に意識の外にあった。
今、この部屋にはドジっ子お嬢様の他にセクシーダイナマイトボディの女戦士(敵)もいるんだった。
オルガマリーの方を振り向くと、彼女は頬を紅潮させながら全裸でベッドの上に座り込んでいた。
エチエチだなあ…………敵じゃなかったら最高なんだけど。
「あのー、オルガマリーさん。話を聞いてもらえないか。俺たちはアンタと戦いたくない」
「だろうな。いろいろ嘘は吐かれているみたいだが、お前が善人っぽいのはたしかだ。じゃなきゃ正体不明の毒を口に含むみたいな無鉄砲な真似はできないからな」
そう言ってオルガマリーはシンシアの指をジーーッと見つめながら自分の指を咥え直した。
エッロ!
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