第48話 認識
それは、まるで北の大森林そのものが蠢いているように見えた。
大規模なスタンピードという言葉で片付けるには足りない。
信じられない数の魔物が
ゲームですらここまで大規模な魔物の群れは見たことがないぞ……。
「いったいなんなんだ……この馬鹿げた数の魔物は……」
「ま、魔物の大群!? レスカ様! いったいどういうことですか!? アジトに魔物の群れが現れたのですか!?」
オレがあげた声に魔神信仰ビアゾのアジトに魔物の群れが現れたと勘違いしたリナシーが、なかばパニックになりながら問いかけてきた。
「あっ、いや違う。すまない、魔物の大群が現れたのは北の大森林だ」
「え? え? 北の大森林、ですか?」
「そう北の大森林にとんでもない規模の魔物の大群が出現している」
いや、だが……魔物の大群も一大事なのだが、まずはアジトのプレイヤーが先だ!
「あぁ、そっちも対処しないといけないが、まずはアジトの制圧が先だ」
さっきまでは眷属など倒してしまえばよいと考えていたが、これがプレイヤーとなると話がかわってくる。
もしオレと同じようにキャンペーンを受けたことでこちらの世界に来たのなら、わけがわからず混乱しているはずだ。
助けてやらなければ……。
『キューレ! 聞こえるか?』
『はい。主さま、すぐに終わらせますので少々お待ちください』
『いや、違うんだ。眷属なら倒せばいいと思っていたのだが、どうやら召喚されたのはプレイヤーのようだし、一度話を聞いてみてくれないか?』
『え? プレイヤーとはなんです? 私には
え? キューレにもプレイヤーは認識できないのか。
たしかにキューレには元の世界の話などはあまり聞かせていないが……。
いや、それ以前に眷属にしか見えないとはどういうことだ?
ゲームで魔神の眷属といえば、人型で角や翼を生やした姿をした魔族をさしていた。
今、キューレの目を通して見ているユニットビューに映し出されているその姿は、普通の人間にしか見えない。
それに中堅クラスのプレイヤーが好んで使う装備に身を固めており、ネームプレートが表示されていることからプレイヤーで間違いないと思う。
『キューレ、ちょっと倒すのは待ってくれ。そいつとは対話を試みたい』
『眷属と対話をですか? そのようなことが可能なのでしょうか?』
眷属とはたしかに難しいと思うのだが、プレイヤーなら話は別だ。
『話ぐらいはできると思うんだが……。よし。ちょうど今アダマンタイトナイトがそっちに到着したはずだ。とりあえずビアゾの奴らの制圧を優先して先に終わらせてしまう』
『わかりました。魔神の信者たちを制圧します』
『いや、キューレはそいつを見張っててくれ。眷属がどういった行動にでるかが読めない』
『はい。ではそのようにいたします』
儀式の間にはビアゾの奴らが全部で五〇人程ほどいるが、一八体のアダマンタイトナイトならあっという間に制圧できるだろう。
オレもユニットビューで
北の大森林の方も気になるが、次はリナシーの妹たちの救出を急ごう。
「リナシー。今から妹たちの救出に向かう」
「え? レスカ様自らアジトに行くのですか!? 危険です!」
「心配してくれるのは嬉しいが、敵の本拠地への潜入などは今まで何度もしている。それにオレがいかないと妹たちをこちらに連れてこれないんだ」
「そ、そうなのですか……」
ゲームでは了承を得られればユニット交換で他のプレイヤーも飛ばす事ができた。
きっとこの世界の住人も飛ばせるはずだ。
ただ、どちらにしてもオレが飛ばす相手の側にいかなければコマンド自体実行できない。
だから救出するにはオレもアジトにいかなければいけなかった。
「まぁ、まかせておけ」
ユニット枠は残り四枠。
でもピクシーバードなら一枠で五羽同時に呼び出す事ができる。
【ユニット召喚:ピクシーバード】
小さな積層魔法陣が出現すると、そこから
これなら何かあっても残り三枠分のユニットが召喚できる。
「これで準備は良し! あ、リナシーは少し離れててくれ。今オレの立っている場所にアダマ……リビングアーマーが突然現れと思うが驚かないように」
「は、はい!」
儀式の間の方もそろそろ制圧が終わりそうだが、北の大森林に現れた魔物の大群のことを考えれば少しでも急いだほうがいい。
「それじゃぁ行ってくる!」
オレは心配そうにこちらを見ているリナシーを安心させるように、不器用ながらも微笑みかけてから……。
【コマンド:ユニット交換】
ビアゾのアジトの奥にある牢の中へと飛んだのだった。
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