第1話-④
「私の自己紹介もこれくらい。後で話す、でいい?」
「うん、話してくれてありがとう。君のことを少しずつ知って行こう」
「でも、私から聞かなくたってわかることはわかっといてね」
カルテを指してからから笑う。
たしかに十二歳という年齢と見た目だけで中学生だと判断したことは僕に非があるのだが。小学生の言うことに腹を立てるなどしょうもない。いくつになってもまだまだだ、と思うが、心の中のもやもやをすぐに小さくできたのは大人になれているということなのか。
「しっかり見ておくよ」
「あ、体重と身長とかからBMIを出したりはしなくていいのよ」
「そんなこと考えてもいなかったのに、言われるとしたくなるだろう?」
「うわー、失敗した?」
笑いながら言う。
「そんな乙女心を傷付けるようなことはしないよ。どちらにしろ細いだろうしね」
なんかやらしいわねえ、とまた笑った。やはり少し、生意気だ。いや、そうしていないとやっていられないのかもしれない。
「じゃあ、今日はここまでにしよう」
「早くない?」
「何か勉強で聞きたいことがあるかい?」
「それはないけど」
「なら休んだ方がいい。初対面の人と長く話すと疲れるだろう? 僕も疲れた」
「そんなこと言っていいの? ちゃんと住まわせてもらってる分働いてる?」
「はは、それは少し耳に痛いな。でも君に無理はさせられないよ」
「……はーい」
「よし、じゃあ、また明日」
「またね」
彼女の後ろでグラフが跳ねる。
あんなに激しいリズムは、僕は一度も見たことも感じたこともない。
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