第31話 猫と九……?

「そー言えば実花、ちょっと聞きたいんにゃけど、日本じゃよく神様じゃにゃい猫を祀ってるよにゃ?」


神様じゃない猫……ってあれの事かな?


「招き猫、ですか? こう右手とか左手を『うにゃん』って感じにしてる白い置物――」


なんて話しながらついつい自分で顔の横に猫の手を『うにゃん』って――うう、相手はバステト様、別に恥ずかしくなんて……あの天照さま、少し向こう向いててもらえません?


「そうそう、それにゃ。あれって結局にゃんにゃ?」


何って、それはあの有名な……ってあれ?


「確か、『諸説あります』ってのだったと思うけど……そう言われてみると、どの説に出てくるのも全部普通の猫だったような……?」


ええと確か、雷を教えたとか飼い主に福をもたらしたとか……あと恨みを晴らしたとか? あれ? それは違う話だっけ?


「そうにゃ。あんにゃに知名度が高くて愛され親しまれているあの猫がにゃ、実はにゃんと神格化はされていにゃいのにゃ」

「えっ、そうなんですか?」


何て意外な……あっ、でもちょっと待って、もしかして猫の事相談した時に……


「だから天照さまも招き猫の中のひとを紹介出来なかった、と?」

ふっと天照さまに視線を送ると、帰ってくるのはいつものふんわりスマイル。

「ええ、そうなのよね。色んな作品でもモチーフになってたりするけど、あの招き猫の子って……この神界に来ていないから」


にゃんと……


「でもあれほど知名度が高くって、しかもイメージが固まったアイコンとかアイドルがあるんですよ? なのに神格化してないとか……それって逆に凄くないですか?」

「まあ、何て言うか……ねえ」

「だにゃあ……」


おや? 何だろうこの苦笑い成分が混じったような反応は?


「ほら、誰もあの子の事を神様だと思ってないから……ねえ」

「みんにゃ猫として親しんでるにゃ」


あ、確かにどちらかと言えばマスコット的な?

あれ? でもだったら何故……


「それでどうして今突然その話を?」


だってバステト様、招き猫は神様じゃないって知ってたよね?


「にゃふふふふ、今のは単にゃる確認、意識の共有にゃ。本題はこれからにゃ。いいかにゃ、偶像だけがあってその対象がいにゃい……例えそれが神でないとしても、それはつまり空席の神と同じ事にゃ。にゃらばそのアイドル・アイコンごと我が眷属達が貰い受けても、誰からも苦情は来にゃいって事にゃ」


え? それってつまり招き猫の中のひとになっちゃおうぜって事? むぅ、流石にそれは……


「いや、そうじゃにゃいにゃ。奴には今後も空っぽの偶像のままソロで頑張って貰うにゃ。我らが狙うのはその派生、というか同系統の偶像アイドルグループにゃ」


グループ!? ってまさかアレを……


「招き坂フォーティ――」

「っ坂道禁止ぃぃーーーっ!!」


ぜぇぜぇぜぇ……ホントにアレをぶっ込んでくるとは……


「ダメにゃ?」

「ダメに決まってます! あちらの信者様達から苦情来まくりますよ!?」

「む……それはよくにゃいにゃ。信者同士の争いは戦争ににゃるにゃ」


あーー、ビックリした……


「じゃあ別のにゃまえ名前を考えるにゃ……そうにゃ、シンプルに『店長ズ』にゃんてどうにゃ?」

「いや、人界の人達って誰もその元ネタ知りませんからね?」


だってこの神界にあるお店の『店長ズ』なんだから。


「うにゃあ……『猫まっしぐら』はどうにゃ?」

「それまた元ネタ知ってる若者なんてほとんどいませんって?」

「にゃら実花はにゃんで知ってるのにゃ?」

「昔、親の録り溜めたVHSテープ見てた時に丁度その猫缶のCMが流れてて……」

「特殊な事情にゃ」

「…………」


「じゃあ神様ネタならどうにゃ? 七福神にゃらぬ『七福にゃん』とか」


あ、可愛いかも。ちょっと検索……


「む、既にいくつか商標として登録されてるみたいです。読み方は違うけど」

「実花、検索先が特許庁とかマニアックすぎるにゃ」

「…………」

いいもん、だったらバステト様の像を画像検索し――

「やっやめるにゃ! 恥ずか死ぬにゃあーー!!」


しょうがにゃいなあ……


「分かったにゃ……だったら『招きーずにゃいん』でどうにゃ?」

「えと……あ、それなら大丈夫そうです。 ……けど何で9?」

「昔から猫の数字と言えば9にゃ。諸説あるにゃ」


はぁ……まあ諸説あるのはいつもの事ですけど。

でも……


「あの、店長って十にゃんなので、ひとり余りますけど?」

「そこは問題にゃいにゃ。歌い手やアイドルにはプロデューサーがつきもの、プロデューサーといえば軍師、そして軍師と言えばコーメイにゃ」


ああ、あのハチワレちゃんか……


「という訳にゃん。残りの九にゃんでアイドル猫グループ『招きーずにゃいん』結成にゃ!」

「ふふっ、店長さん達が実花のライバルになっちゃったわね」

「天照さま……その計画って、まだ生きてたんですね……」

「当然よ」


もう、何だかなあ……

あれ? でもそもそも――


「アイドル活動って言っても、人界で芸能活動とか出来ないんじゃ?」


店長ズもあれで一応神様的なアレだし、人界で出来る事なんてせいぜいコンビニでこっそりスイーツ買うくらいしか……


「にゃふふふふ、そのあたりに抜かりはにゃいにゃ。最近の人界にはネットという便利なものがああるのにゃ。ネット上のバーチャルなアイドルを目指すにゃ。フォロワーが即ち信者にゃ、イイニャが即ち柏手かしわでにゃ」


まあその解釈、あながち間違ってるとも言えないんだよね――ってちょっと待て、つまりそれって……ネットにガチの『神降臨』って事じゃん!




そして数日後……


某SNSと某ニャンスタグラムに店長柄の招き猫が九体並んだページがオープンして次々と情報を発信、それから某動画配信サイトには店長ズの可愛賢い動画が連日アップされるようになりました。

なお、どのサイトも信者とイイニャは少しずつ増えている模様。




……ってこれアイドル活動っていうよりむしろペット紹か――(自主規制)



▽▽▽▽▽▽

大変お待たせしました、いよいよ再開です。

またのお付き合い、よろしくお願いします。


でもストックがない状態からのスタートなので、すみませんが当面の間はゆっくり更新で進めさせてください。


再開にあたり、ここまでの話をより楽しく分かりやすくの方針で調整しました。

ナント以前と比べて面白さ1.25倍!(あくまで作者の感想です)

という事で、更新を待つ間に楽しんでいただければと思います。

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