第22話 グッズを作ろう

「グッズ……グッズ、ねえ……」

「実花、その思わず絶望しそうな導入はどうかと思うわよ?」


天照さま…………何だか息をするようにツッコミを被せてくるようになったわね。何かが吹っ切れたとか?


「うーん……一口にグッズと言っても、一体どんな物が喜ばれるのか想像がつかなくって」

「成程…………あっそうだ、これを日本の観光地に置き換えて考えてみましょうか。例えばそうねえ……よしっ」

そう言って瞳を輝かせる天照さま。

そして続く言葉が――


「あなたは沖縄へ観光に行ってお土産物屋さんに入りました。さて、あなたが思わず買いたくなったものは何ですか? ただし食べ物は除きます」

突然の心理テスト!?


「そうですね、貝殻の――」

「海人Tシャツよね!」

「シーサーと――」

「そうよね、やっぱり海人Tシャツよね!」

「あとは――」

「海人キャップも捨てがたいわよねっ!」

「…………」


をい……


「さて、第2問です。次にあなたは京都でお土産物屋さんに入りました。ここでは何を買いますか? もちろん今回も食べ物は除きます」


「西陣織の――」

「うんうん、でっかく『誠』って書いてないとね!」

「……」

「あ、『新選組』もいいわよね」

「ええっと」

「でも、ここはやっぱりストレートに『京都』かしら?」

「…………」



「さていよいよ最終問題です。これに正解すれば百万ポイントよ! 頑張ってね実花……さあ次は静岡です。 さて何?」


「『富士山』プリントですか?」

「おめでとう実花! 百万ポイントゲットよ!」

「……」


超ニコニコ……


「ええっと、つまり『漢字をプリントしとけば大丈夫』って事?」

「ええ、理解してもらえてうれしいわ! 結局ね『どんなもの』よりも『どんな漢字』なのよ。で、そうなればやっぱり一番はこのお店の名前じゃない? だからね、『実花照』がでっかくプリントされていれば、それはもう爆売れ間違いなしって事なのよ!」


そっかぁ……それがティーンと来ちゃったんだ…………


「Tシャツは外せないわよね。色違いで5色展開。店長イラスト付きのバリエーションもいいわね」


む、店長イラストとな? それは善い! ええ凄く善い物だと思いますよ!


「意外なところだと暖簾かしら。結構ウケると思うのよね。ほら、ザ・日本って感じがするじゃない?」


まあ、確かに。


「あとはこのお店の看板のミニチュアよね。しばらくして新しい看板に架け替えたら『初代』『二代目』『三代目』ってコレクターズアイテムに発展しそうだし」


あの、目の輝きが普段と違いますよ?


「ポストカードとかもいいわよね。それで手紙出すとか、もう宣伝してくれてるようなものじゃない?」


……天照さま、あなたもう今日から「商売の神様」名乗っていいんじゃないかしら?


「さあ実花、思い付いた物を片っ端からじゃんじゃん作っていきましょう。概念の実体化ならサンプルを作り放題よ? コストは神力だけだから失敗とか全く気にする必要ないし。効率で言ったら3Dプリンターだって目じゃないわよ!」


確かにそうなんだけど。そうなんだけど!



「……いつものアマおねえちゃんと違うよ? 普段も時々アレな感じな時あるけど、ここまでアレなのはレアよ? レアなアレよ」


いやヒルちゃん、それ何言ってるのか分からないよ。何言いたいかは分かるけど。


「ヒルちゃんはどんなグッズがいいと思います?」

「それはもちろんあれよ。名前は知らないけど、透明で中に雪が降るやつよ。中にこのお店とか入れるよ」

「ああ、スノードームって言うんだっけ? あれ、違ったかな? ……確かにあれもお土産の定番ですね」


検索検索っと……ああ、スノードームで合ってた。え、それ日本だけ? 他の国ではスノーグローブって呼ぶんだ、へーー。こんなとこでもガラパってたんだ。


「バステト様はどうです? 何かアイデアあります?」

「そうにゃにゃあ……天照のお土産って言ったらアレにゃ! 三種の神器にゃ!」

「ああ、えっと何とかいう鏡と除草の剣と……」

「ブルーレイと原作本とフィギュアにゃ! フィギュアはプラモでも可にゃ!」


ああ、天照さま……神様自ら布教活動してらっしゃる!


「今回はこのお店のグッズなので。あと流石に同人OADは実体化では作れないですよ」

「それは残念にゃ……、ってまあそれは冗談にゃんにゃけどにゃ。でも実花、答えは初めから出てるんじゃにゃいのにゃ?」


いきなり、ここに来て一番のシリアス顔をするバステト様。『答えは初めから出ている』……何て神様的な発言!


その答えとは?

……思わずゴクリ。


「……店長シリーズにゃ」


ピッシャーーーーン!!!!!!

天啓と言う名の落雷! からの白目っ!


「実花照の差別化ポイントは何処にゃ? 店構えにゃ? それとも取扱商品にゃ? ……違うにゃ! 他の店との明確な違い、それはTENプラスONEの猫店長ズにゃ!! 今ここで我々が考えるべき事、それは差別化ポイントであって集客ポイントではにゃいのにゃ。そして差別化ポイントとは、つまりは純然たる特徴にゃ! それこそが……グッズ展開で考えるべき最大のポイントにゃのにゃ!」


ズガガガガーーーーーン!!!!!!

そして最大級の衝撃!!


おお……今まさに……コンサルしん様がご降臨なされた!! へへーーーっ!



そして……


ええ、作りましたとも。

でっかく店名をプリントしたTシャツや暖簾、ポストカードにタオル・ハンカチ・キーホルダー等々……あとついでにスマホケースも。


スノーグローブは中身を変えて何種類も。

雪の代わりにちっちゃい店長が大量に降ってくるやつはそのまま自室に。降りしきる店長達の中に佇むバステト様の立像がポイント高し!


そして、店長の店長が店長の為に店長として色々な店長が可愛さ溢れる店長シリーズ!!

雑貨から文房具、アクセサリーなど、様々な日用品に店長がぶら下がっていたりプリントされてたり。

それはもう大量に。


それらを全部『推勧売おすすめコーナー』に並べたら、その素晴らしさを改めて実感!

そう、まさに――



コンサルしん様の・言・う・と・お・りっ!!


「実花……」

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