第44話 シンカンセンスゴイワクワクメイチャン


「すごいなメイ、こんなに調べてあったのかよ?」

「えへへ、捗っちゃってさ~♪ とりま気になるとこだけリストアップしといたの。ホントはもっといっぱいあったんだよ?」

「これよりもっと!? マジかよ……で、他にはどこ行きたいんだ?」

「んーとね! フェリー乗りたいからフェリーで厳島神社は行くっしょ? で、島にある水族館が良さそうだから一緒に寄って、市内でお好み焼き食べて原爆ドーム見て~、あと離島にあるっていうアイス屋さんとか! プリンとみかん大福のお店も抑えたしっ、それからしまなみ街道も巡ってみたいっ! あ~待ってやっぱ帝釈峡も行きたいな! けど夕方はこっちの予定あるし~……うーんスケパンパンなんだけど!」

「メイ待て待て! さすがにそんなたくさんは行けないぞ? しかも結構距離離れてるのも多いしさ。もうちょい絞っておいてくれよ」

「それ宿題よりムズイって~! やっぱ1週間くらい泊まっちゃわない?」

「いや夏休み終わるし旅費が持たんだろ」

「だよねー! うぁ~んどうしよ~!」


 悩ましくも嬉しそうにころころと変わるメイの表情を見ていると、なんかこっちまで楽しくなって笑ってしまう。


「あんまガチガチに予定詰めると慌ただしくなって楽しめないかもしれないしさ、ほどほどにしとこうぜ」

「うう~んわかってるけどぉ。でもでもっ、せっかくおにーさんと遊び行くんだからやれることはやりたいじゃん」


 拗ねるように口を尖らせながらスマホとにらめっこするメイ。

 俺は自然と答えていた。


「別に今回だけで全部済ませなくても、また今度来年にでも行けばいいだろ?」

「えっ?」


 メイは、少し驚いたように呆然とこちらを見てきた。


 それから俺の腕に抱きついてくると、嬉しそうに笑ってささやいてくる。


「ねっ、それってデートのお誘い? あたしの来年の夏を予約的な?」

「い、いやそんなんじゃないって。別に何度でもこれるだろって意味だよ。他意はない!」

「ふぅ~んそっか~? えへへ、じゃあいいよっ。おにーさんに予約されてあげるっ♪ あ、キャンセル料高くつくからそのつもりでね~?」

「は? ……ちなみにどんくらい?」

「ん~100万くらい?」

「高すぎだろ! まだ予約はやめとくわ!」

「はいダメもう遅いでーす。ま、今は来年より今日のことだよねっ? それじゃライト版にスケジュール変更スケ変しときまーす! まずはゼッタイ行きたいとこだけあげとくね~! えっとね、じゃウサギ島の次は~」


 そんなメイの横顔は本当に生き生きとしていて、この段階でここまで楽しんでくれてるなら一緒に行ってよかったなと思えた。本当に来年も行ってもいいかもしれないな。


「──あ、そういや宿泊先の旅館はメイが決めてくれたとこにしたけどさ、ちゃんと予約出来てるよな?」

「んー? うんほらバッチシ! 露天温泉付きの客室なんてサイコーだよねー!」


 予約サイトの予約画面を見せてくれるメイ。よし、確かにバッチリだ。これなら着いた先でまさかの予約ミスが~という漫画とかでありがちな万が一のハプニングもなさそうだ。


「ここ、客室露天風呂までついてる割にそれほど高くなかったよな? メイ、よくこんないいとこ見つけられたな」

「えっへへそうでしょそうでしょ? 宿泊予定日まであんま余裕なかったからさ、宿題無視って毎日いろんなサイトでお風呂でもベッドでもひたすら探しまくったかんね! 見つけたときはよっしゃーってなったよ!」

「そこで無視ったせいかよ宿題遅れたのは! まぁJKの根気を見せつけられたわ。大変だったろ?」

「まーね! ただ別々じゃなくて一部屋だからギリギリ予算内に収まったってーカンジだけどね。あと限定タイムセールとたまたま見つけたカップル割クーポンのおかげ! これなかったらムリだったからね! メイちゃんの頑張りを褒め称えるよーに!」


 えへんと胸を張って威張り尽くすメイ。ちゃっかりカップル割なんて使っていいのかという気もするが、そんな厳しい規定もないだろうしな。

 それにしても、夏休み終盤のこの時期によくもまぁこんないい宿が抑えられたもんだと思うが……一応問題はあるといえばある。


 ──二名一室。そう、メイと二人で一部屋だということだ……!


 そのおかげで安く泊まれるわけだし、部屋も結構広いみたいだから問題はないだろうし何も起きないだろうが、本当にいいんだろうか。


「──んふっ♪」


 いつの間にかすぐそばで俺の顔をじっと見つめていたメイ。思わず「わっ」と声が出る。


「な、なんだよ?」

「そのもぞもぞ顔はねぇ~、メイちゃんと同じ部屋に泊まれてドキドキ~って顔だねっ! あっ図星? もう一緒にオフロ入る妄想とかしてる? 着いてもないのに朝から元気じゃ~ん♪」

「してないしてない心を読むなっ! ……いやまぁ多少はしそうだったかもしれんが! そりゃ一部屋になるとは思ってなかったしだな」

「アハハやっぱりっ? ま、イイトコ泊まれるんだしそんくらいはガマンっしょ! お布団も一つってワケじゃないんだし、そんな緊張することないじゃん」

「それはそうだけどさ。このプランでよくご両親が認めてくれたよなぁ」


 本当に今でも不思議に思う。二名一室で旅館にしっぽりなんてお父さんが許してくれるはずないだろと思ったのだが、なんでか通ってしまったのだ。


「パパは最初めっちゃ反対してたけどねー。粘ったらちゃんと連絡すること条件に認めてくれたよ。あたしもちゃんと宿題やった以上は認めざるをえなかった的な? それにおにーさんヘタレだから心配ないって言ったら苦笑いしてたよ~!」

「ちょっ、まさかそれで認めてもらえたのか……!? くっ、俺はご両親にまでヘタレだと思われてんのかよ複雑なんだが」

「アハハ! まーヘタレって言い換えれば誠実ってことじゃん? おにーさんなら大丈夫って信頼でしょ? 良いように解釈しておけばよろしーっしょ」

「メイのポジティブシンキング参考になるわ……てかお前が原因ではあるけどな!」

「アハハハ! じゃ安心させるために新幹線乗ったよーって連絡しとくねっ。こまめな連絡大事!」

「そうだな。ご両親にもお土産しっかり買ってこないとな」

「へへ、そだね! フミっちとうとうとと、他の友達やクラスメイトにもいっぱい買ってかないとなー!」


 ご機嫌にスマホをいじるメイ。するとすぐにご両親から連絡が帰ってきて、その画面を見せてくれた。


『ママ了解。二人仲良く楽しんできてね♥』

『パパ了解。くれぐれも節度を保つこと。無事に帰るまでが旅行と心得なさい!』


 お母さんとお父さんのメッセージにうなずき合う俺たち。


「ね、おにーさんっ」

「ん?」

「めっっっちゃ楽しい旅行にしよーねっ!」


 そう言ってニッと満面の笑みを浮かべるメイ。

 そんなことを言われたら、俺も笑って応えるしかなかったのだった。

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