第38話 二人の旅行計画

 それからメイと一緒にそうめんの残りを食い、デザートのアイスを食い、ハワイでの土産話を聞いているうちに時間が来る。


「それでさぁ、朝市でおいしいフルーツジュースがあってね! ──あ、もうすぐパパが迎えにくるって。あーもうそんな時間か~」


 スマホを手に、ちょっと残念そうにつぶやくメイ。メイと一緒だとなんかあっという間に時間が過ぎるな。


「んーどうしよっかなー。もっと話したいしこっち泊まっちゃおうかな?」

「俺は別にいいけど、メイは旅行疲れも残ってるだろ? 今日は早く帰って風呂入って休んでおいた方がいいんじゃないか。話なら電話でもいいし、また今度聞くしさ」

「あー確かに飛行機でもあんま眠れなくて疲れちゃったんだよね。今日はそうしよかな。洗濯もいっぱいしないとだし。ふわ……ちょっと眠くなってきちゃった~」

「じゃ、お父さんが来るまでちょっと休んでろよ」

「んー。やっぱ畳っていーよねぇ~」


 そう言って畳にごろんと寝転がるメイ。

 横になったままメイがこちらを向いて口を開く。


「ね、そいえばもうすぐお盆じゃん? おにーさんは実家帰らなくていーの?」

「ん? あー俺はいいんだよ。一応親父から勘当されたことになってるからなぁ。ま、母さんはいつでも帰ってきていいって毎年言ってくれてるけどな」

「ふーんそっか。おにーさんの地元って広島なんだっけ? 海とかキレイ?」

「ああ。瀬戸内の海は穏やかだしな。俺のいたとこは柑橘系が名物でさ、みかん大福とかメイは気に入りそうだな。美味いぞ」

「へぇ~そうなんだっ? 他にもいろいろ美味しいのあるの?」

「もちろん。広島は名物多いからな。一番有名なのはやっぱお好み焼きだろうけど、他にもあなご飯とかも呉のカレーとか尾道ラーメンとかいろいろあるぞ。スイーツ系ならもみじ饅頭に八天堂のくりーむパン、ボリュームありすぎなメロンパンとかな」

「へえええ~! そんないろいろあるんだっ!」


 がばっと起き上がるメイ。その目は興味津々とばかりにキラっている。

 さらにメイは、ササッとこちらにすり寄ってきて言った。


「……ねっ! あたし、おにーさんの地元行ってみたいな! 一泊とか二泊だけでもいいし行ってみないっ?」

「え? ちょ、ちょっと待てよ。俺の地元に? メイも一緒にってことか?」


 突然の発言に呆然とする俺。メイは勢いよく首を縦に振った。


「うんうんっ! 下旬はあんま予定ないけど夏休みは最後まで充実させたいし、美味しいのいっぱい食べたいし、もっと海とか見たいしさー! ほら、この辺の海は泳いだり遊んだりするのとはちょっと違うじゃん?」

「ああ、まぁそうだな。けど、さすがに俺の実家には戻れないし泊められないぞ?」

「うんっ。だからどっか旅館とかホテル泊まろ!」

「えっ?」

「それにほら、おにーさんと買ったあの水着ハワイでも着たんだけどさ。もったいないからこの夏にもっとたくさん着ときたいんだよねっ! プールもアリだけどー、おにーさんと二人で海とか行っちゃうのもいいじゃんって思って!」


 なんだかテンションが上がった様子のキラキラした瞳で迫ってくるメイ。その勢いに思わず「おお……!」と押されてしまった。どうやら本気らしい。


 メイと二人で旅行? しかも俺の地元に?


 想像すると──なんだか少し胸が躍った。

 メイがあれこれ楽しんでくれているだろう場面がいくつも思い浮かんだからだ。


 しかし、二人で旅館かホテルに……?


「今ならまだ夏休み中に間に合うっしょ? おにーさん、だめ?」


 メイが首を傾けて、ちょっぴり不安そうに俺の顔をのぞいてくる。


「いや、ダメじゃないけどさ。その、メイは俺と二人でいいのかよ?」

「いいから言ってるんじゃん?」

「そ、そうか。えーと……じゃ、じゃあまずはメイのご両親に訊いてみてくれよ。もしOKが出るんなら俺も構わないけど」

「ホントっ? やったじゃあ決まりね! えっとえっと、予約とか考えたら行くのは8月の終わりくらいがいいよねっ? すぐ連絡しとくー!」

「お、おう」


 そう言いながら、すぐにスマホで両親へ連絡を入れるメイ。その横顔はウキウキと本心から楽しそうなものに見えた。

 うーん、ご両親とはもう面識があるとはいえ、いきなり二人きりで旅行なんてなぁ。メイには悪いが、さすがにそう簡単にOKは出ないだろう。ご両親が反対する以上は俺も同意は──


「はい返事きた!」

「って早ぁ!?」


 メイから見せられたスマホのメッセージ画面を凝視する俺。


「えーと……『ママOKです♥』? いや了承されたんかーい!?」

「うん。──あ、ほらパパもいいって」

「えっマジで!?」


 メイのスマホには、さらにお父さんからのメッセージも届いていた。あの絶対認めないおじさんが!?


『健全な旅行に出来ると両名共に誓えるならば許可する。ただし全責任は成人たる悠木くんが負うこと』

『今からお迎え出発します』

『メイちゃん待っててね』


「ええ……マジでお父さんまで……?」


 親子揃ってなんという即断ぶり。さすが朝比奈家ということなのか!


「ハイ、じゃこれで決定ねー。でさ、広島って新幹線がいーの? それとも飛行機?」

「え? ああ、東京からならどっちでもいいと思うけど……便利なのは新幹線かな。飛行機はもっと前から予約しておけば新幹線よりかなり安いけど、当月だと高めだしな。あと空港が結構遠くにあるからな」

「へーそなんだ! ただ水着とかスマホとか買っちゃってヨユーないからなるべく安いのでいこ? なんなら夜行バスとかでもアリ!」

「いやいやさすがに一人娘を預かって夜行バスには乗せられないって! 半日はかかるだろうし、広島って結構遠いんだぜ? 新幹線でもまぁ工夫すればそれなりに安くはなるし、途中下車でいろいろ寄れるからそっちのがいいと思うぞ」

「ん、そっかオッケー任せる! じゃあとは泊まるとこだねっ。おにーさんオススメの旅館とかあるの? あたし温泉があるとこがいいな~! ねっ、パパが来るまで一緒に調べてみよーよ!」


 そう言って、早速スマホで広島の宿情報を検索し始めるメイ。さっきの眠気はいずこに、ウキウキなご様子であった。

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