第8話 理由

あたしの口が固まってしまった。何てパパに言えばいいのか分からない。

「突然変なこと言ってごめんね。はい、ジュース」

パパからオレンジジュースが入ったコップを受け取った。ジュースを1口飲む。オレンジの味はしない。

「あ、お姉ちゃんは悪い訳ではないよ。ママと考え方が合わなかったんだ」

あたしが求めていないのに、パパはママと離婚した経緯を話した。パパはお姉ちゃんが死んだのは運命だったからそのままお姉ちゃんを静かに眠らせるべき、と思っていたこと。だけどママはお姉ちゃんが居ないと生きていけないこと。それでよく喧嘩になっていたこと。ママから聞かないことばかり聞いた。

パパの話が終わったあと、何だか頭がボーッとした。とにかく重い、たくさん勉強した後のような感覚。

「ごめん、一方的に話して」

あたしはかぶりを振った。パパとママが離婚した理由は一応知らなきゃいけないよね。あたしはパパに空になったコップを渡した。

「あ、ありがとう」

パパはキッチンにコップを置いてスポンジで洗剤を泡立てる。あたしはベッドから立ち上がってパパの様子をボーッと見た。

「今日は泊まってもいいよ。金曜日だしね。ただ、泊まるならママに連絡しなさい」

外は気がついたらほとんど暗くなっていた。夜は嫌い。暗くて、お化けが出る気がするから。あたしはママにメールを打ってパパの家に泊まることにした。

「ママに連絡したよ」

「分かった、今から晩飯の準備するから」

あたしはスマホのロック画面を開こうとした。メールの通知が来た。あたしはスマホの電源を切った。

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