第2話 姿

「お姉ちゃん?」

私の問いかけには誰も答えない。

「お姉ちゃん、だよね?」

あたしはお姉ちゃんの頬に触れた、冷たいけど、何か付いている。あたしの指先が赤い、これは……血?

あたしはお巡りさんの目を見た。

「君のお姉さんで間違いないね?」

「……はい」

状況が飲めないまま、あたしはうなづいてしまった。

「……あの、あたしのお姉ちゃんは?」

「君のお姉さんは、飲酒運転をした大型トラックに跳ねられて、亡くなった」

お巡りさんはあたしの目を見てロボットのように淡々と話した。すると、茶色のスーツを着た刑事さんのような人が部屋に入ってお巡りさんと何か話した。

「もし何かあったら第2事務室まで来てくれ」

お巡りさんは刑事さんらしき人と部屋を出た。そのとき、あたしは初めてパパとママの姿を見た。2人とも顔を手で隠して泣いていた。ママはあたしに気付いて涙でびしょびしょの手であたしを抱き寄せた。

「サキ、ちゃん……。お姉ちゃん……」

涙は不思議と全く出なかった。あたしはお姉ちゃんの死を受け止めれていないのか、それとも、悲しんでいないのか、理由はよく分からなかった。あたしはお姉ちゃんの目の前でただボーッと突っ立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る