第28話 闇に囚われし生命
ランベルトス南西の研究所にて、〝
「何を仕掛けてくるかわからねェ、二人とも気をつけろッ!」
「数も多いね。わたしたちだけじゃ不利かも」
魔導兵らのフードの下には不気味に動く大きな目玉が
「よしッ。ここは一旦、通路に下がって一体ずつ――」
「おおっと、それは困りますね!」
通路での各個撃破を試みようとしたエルスだったが、彼の言葉を
「クソッ、閉じ込められた!?――ッて、あんたは……!?」
振り返った先にいた〝女〟を見て、エルスは驚きの声を
「悪いケド、逃がすワケにはいかないのよん?」
光沢のある銀色の鉄格子の向こう側で、ゼニファーがエルスを
「ううー! ゼニファー、まさか裏切ったのだー!?」
「馬鹿言わないでよねん。最初からアタシの〝ボス〟は
「うむ、うむ。ご苦労です、ゼニファー」
不気味な笑みを浮かべながら、ボルモンクは巨大な
「
「わかったよッ! 戦えばいいんだろ! その代わり、早くクレオールを返せッ!」
「ああ、これは失礼。冒険者の諸君は
意味ありげに言いながら、ボルモンクは
「なッ……!? クレオール――ッ!」
クリスタルの中は空洞状になっており、内部には巨大な〝
「ふぅむ。少し
「おいッ! クレオールに何をしやがった!?」
「おや、おや。
「どこまでも非道な悪人めー! もう許さないのだー!」
ここまで
「ヴィスト――!」
その瞬間、
「ぎゃうー!」
空中で思わぬ不意打ちを受け、ミーファが床に落下する。
幸いながら、彼女の〝
「ダメよん? ちゃんとルールを守ってくれなくちゃ」
*
「大丈夫かッ、ミーファ!?
「実験の内容は
ボルモンクが
「クソッ! このままじゃクレオールが……! 二人とも、いけるか?」
「大丈夫だよ。頑張ろっ!」
「ふふー! 正義の前に、悪は滅びるものなのだー!」
魔導兵は武器を持たず、戦闘の意志も感じられない。なにより
しかし仲間たちからの
「うぉぉぉ――ッ!」
「ルォォン……。
かつて相対した〝
「チッ……! こいつら、ニセルの
「問題ないのだ! それっ、どーん!」
ミーファは垂直方向へ跳躍し、空中で斧を振り下ろす。
「ォオオン……!
*
「ほう、ほう。さすがはミーファ王女。
「ドワーフだろうとノームだろうと、ミーは悪人に
ドワーフ族とエルフ族の間には多くの場合、ノーム族が誕生する。
「結構、結構。我輩とて、ノームの
ボルモンクは芝居がかったように高笑いをし、おもむろに指で音を鳴らす。
「魔導兵、
「ルォォ……!
魔導兵らの放つ謎の音声と、
「なんなんだよ……。コイツらは……!」
言い知れぬ恐怖に
「はぁっ! せいっ――!」
「エンギル――っ!」
しかし〝二の矢〟を用意していたのか、続いてアリサは
「オオォッ……!
その音声と共に、魔導兵の周囲に高濃度の瘴気が放出される。その〝闇色の霧〟に
「うーん。どうしよう、だめみたい」
「なんてヤツだ……! アリサの怪力でも通用しねェのかッ」
アリサの剣は細身ではあるが、一般的な剣とは比較にならないほどの切れ味と頑丈さを誇っている。それに加え、
「そりゃー! ずっどーん! 悪よ滅びるのだー!」
一方、ミーファの方へ目を
「俺の力じゃ足りねェ……。それなら魔法でッ!」
エルスは左手に
「ヴィスト――ッ!」
風の精霊魔法・ヴィストが発動し、
「ォォォ……。
少しはダメージがあったのか、鋼鉄製の腕には一本の裂け目が入り、そこから瘴気が
「クッ、足りねェかッ! ならッ! 次は剣と魔法だッ!」
エルスは剣に
「レイフォルス――ッ!」
炎の精霊魔法・レイフォルスが発動し、エルスの剣が〝炎の魔法剣〟と化した。
「ほう……!?」
エルスの魔法を見ていたボルモンクが、思わず
「いくぜェー! うぉりゃアァ――!」
気合いと共に、エルスは炎の剣を振り下ろす。魔力の込められた刃は傷ついた腕を斬り落とし、鋼鉄製の
「ぐぉぉ……!? かッ、
「ゥルルル……。
魔法剣を扱うには、当然ながら筋力の
「ぐわぁッ……!? チクショウッ!」
「エルスっ! はあぁぁ――っ!」
エルスと敵の距離が離れた
「ォルルル……。
魔導兵は機能を停止し、瘴気をまき散らしながら
*
「エルス、大丈夫っ?」
「助かったぜ、アリサ! とは言っても、ちょっとやべェな……」
なんとか三体を撃破したものの、すでにエルスは剣を失い、アリサの攻撃もまともには通用しない。ミーファは単独で立ち回っているが、相手に攻撃のパターンを読まれてしまったのか、彼女も少しずつ
「非常に良い戦いぶりです。素晴らしい実験体だと
「へッ!
「それは
何かを思いついたのか、ボルモンクは狂気じみた笑みを浮かべながら、エルスへ向かって白い手袋を
「そうですね。次の実験結果次第では、前向きに検討しましょうか!」
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