Lesson3 お姉様ちゃんと元気ちゃん
『ふふ、もしもし』
「あ、もしもし」
『初めまして。わたしがお姉様ちゃんよ。今日はよろしくね』
「あ、ど、どうも。よろしくお願いします」
『そんなに固くならないで。わたしはあなたと仲良くなりたいって思ってるの。そうだわ! わたしのことはおねえちゃんって、呼んで?』
「お、おねえちゃん……」
『ふふっ、よくできました♪ えらいえらい』
「お、おぉふ……」
『今日はこうしてお話することになったわけだけど、何かしたいことって、ある? 今度は直接会うわけだし、要望を言ってくれたらおねえちゃん何でもしてあげるから』
「なんですと? ……いやいや! いかがわしいことじゃなくてだな。あ、あぁ、そうだ。俺は聞く力を養いたいんだ。夢のハーレムを築くために! それについてお姉様ちゃん、じゃなくておねえちゃんに何かアドバイスいただけたらなと」
『聞く力、かぁ。そうね、やっぱりお酒かしら』
「お、お酒⁉︎」
『えぇ。話のつまみにはビールが一番合うのよね〜。あ、そうだ。確か成人してるわよね?』
「まぁ、去年国から大人になれと宣告されてしまったので」
『じゃあ、リモート飲み会、ってことで。ちょっと待っててね。冷蔵庫から取ってくるわ』
『おまたせ。それじゃあ──カンパーイ♡』
「かんぱーい」
『んっんっんっ……ぷはーっ! ふふ、美味しい』
「いやぁ、いい飲みっぷりすね。音からでも分かりますよ。お酒好きなんですか?」
『そうねぇ、仕事終わりとかは一人で晩酌とかしてるかな。気付いたら一ケース空けてた、なんてこともあるわね』
「強っ⁉︎ ……ん? けど、確か先月の成人祝いで飲んだ時、お酒弱かったような──」
『ん、んんっ‼︎』
「あぁ、すまん。えーっと、あぁ、特訓だよな。おねえちゃんの話すことに対してうまいことリアクションを取る。よしっ! いつでも来い!」
「……ん? あの、おねえちゃん……?」
『わたしとえっちなことしたいって、思う?』
「え?」
『だって、これってマッチングアプリだよ? ゆくゆくはさ、そういうことも考えてるんじゃないの?』
「お、おぉ……いやー、まぁー」
『やっぱり。男の子だもんね。おねえちゃんには分かるよ。……わたし経験豊富だから。おねえちゃんに任せて?』
「お、俺は……」
『ふふっ、うっそ〜』
「……はい?」
『ごめんなさい。ちょっとからかっちゃった♪』
「じょ、冗談か!」
『あはは。もう〜聞く力がとても大切だよ。これが嘘かどうかを見極めないといけないからね』
「そうだったのか……いやぁ、一本取られたよ」
『……でも、本当にしてもいいよ』
「え?」
『──別に望んでくれるなら、私はいいよ』
「あっ、あははー。さては、また揶揄っているだろ? 二度も同じ手には──」
『先輩』
「んぐっ」
『私は……どんな役も演じてみせますよ……。先輩の夢が叶うなら……ほんとは嫌だけど……私……』
「……おい」
『ぐー……』
「……やはり酔ってたか。どうにも様子がおかしいと思ったわけだ。ふぅ、寝てしまったのなら仕方ない。電話を切るぞ。……風邪、引くなよ。じゃあ、おやすみ」
◇ ◇ ◇
「……さすがに疲れたな」
「まぁ、朝から晩まで並んでましたからね」
「ったく、春休みだからといってどうしてこうみんな遊園地に行きたがるもんなんだろうな。もっと等しく全国に散らばりたまえ!」
「私たちもこの集団の一部ですけどね」
「俺たちはここに配属されたのだ。後輩の誘いによってだな」
「え、私って国の人事を担ってます?」
「それにしても、まさか後輩と二人で遊園地とは。最初に入部してきた時のことを考えると衝撃的だな」
「確かにそうですね。先輩はもう卒業して学校来ることないし。まぁ、最後くらいはって……楽しくなかったですか?」
「いやめっちゃ楽しんだ」
「楽しんだかい」
「ああ。世界観に合わせて作り込まれた街並み、定期的に行われるグリーティングにおいてのサービス精神。値段は高いがコンセプトに沿った美味しい料理の数々! 素晴らしいものだったな」
「絶叫アトラクションはどうでした?」
「……よく死人が出ないよう物理演算がされているな」
「あー怖かったんですね」
「何だと⁉︎」
「私はもっとアトラクションに乗りたかったんですけど、先輩がまさか怖くて泣いちゃうなんて思ってませんでしたよ〜」
「怖がってなどない! あれは人類に早すぎたという、憐れさと悔しさからであってだな……」
「あーあ。私はもっと乗りたかったですけどねー」
「まだそんなに体力残ってるのか。意外と後輩は元気ちゃんだったんだな」
「何ですか、元気ちゃんって。でも私に無理やり付き合って乗ってもらってすみませんでした」
「何を謝る必要がある。休憩がてらに観たストリートショーは素晴らしいものだったぞ。ああやって人前で演じるというのも面白いかもしれんな!」
「先輩陰キャなのに……?」
「おぉい! それは別にいいだろ! だが、とにかくいい経験になった。今日が一番後輩と話した、過去最高記録だな……!」
「そうですね。……並んでる時ほとんど本読んでましたけど」
「話すネタがなくなってしまったからな」
「
「俺にしては
「……もっとたくさん聞きたかったな、先輩の話」
「そうか?」
「うわぁ、後輩が良いこと言ってるのに。先輩ないですね」
「えぇっ⁉︎ 別にこれからだって、まだまだ話せるだろ。これが今生の別れではあるまいし。次こそは爆笑間違いなしのとびきりのネタを仕入れておくよ」
「ふふっ、そうですか。やっぱり先輩は大学でもボッチなので寂しくて連絡してきますか」
「なんだと⁉︎ ……可能性大だなおい」
「とりあえず。先輩、卒業おめでとうございます」
「おう。ありがとな」
「──あ、先輩もうすぐ電車来るみたいですよ」
「じゃあ、ちょっと走るか」
**
「──一本見送ればよかったですね」
「……っ、そうだな……。まぁ冷静に考えれば、閉園時間となればみんな一気に帰るわけだ。満員電車になるのは至極当然のことだよな」
「私、今少し浮いてますよ」
「マジか」
「はい。……だから、その、ちゃんと支えててください」
「お、おう……」
**
「ふぅ、二駅で済んでよかったよ」
「そうですね──あ、次は座れるっぽいですよ」
「おぉ、そうみたいだな。……ふぅ、最後にどっと疲れたな」
「すみません先輩」
「いやいや、どうってことはないぞ。だが、ちょっと寝る。到着したら起こしてくれ」
「分かりました」
「……ぷっ」
「……え、なんだ?」
「いえ。先輩って寝顔幼いですね。なんだか弟みたいだなって」
「俺は長男なんだが。って、後輩には弟がいたのか?」
「いえ、一人っ子ですけど」
「何でそう思ったんだよ」
「何となくです」
「そうか、何となくなら仕方ないな」
**
「着いたぞ」
「……ふぇ? あれ……」
「俺が起きたら寝てたぞ。ヨダレ垂らしながらぐっすりとな」
「んぐっ⁉︎ 起こしてくださいよ……」
「幸せそうな顔してたから、起こすのも可哀想だと思ってな。乗り換え駅が終点でよかったなー」
「あぁ、そっか、また乗り換えしないと……」
「……歩くか?」
「え?」
「そっちが寝ている間にとっておきのネタを思い付いたぞ。抱腹絶倒のネタを話してやる」
「……ふふっ、やってみてください」
「よぉし、じゃあ降りるか」
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