第7話 召喚された!……初めての技!

 「……」


 気づけば僕は、さっきまでゴロ寝してたのに――


 魔法陣を通って、筋肉ゴリゴリの大型犬みたいな魔物×4体に囲まれていた。


 しかも、よく見ると頭に羊の角がついてる。何それ、怖。


 「助けて!」


 ……叫んだのは、うちのマスターだった。


 なるほど。状況は理解した。


 細かい話はあとだ。

 来たな、待ちに待った初バトルってやつが!


 「フッ……」


 俺はゆっくりと背中のバスターソードに手を伸ばし――


 「うお、軽っ!? え、ウソでしょ?」


 見た目はドでかい鉄の塊なのに、持ってみたら木の枝レベル。

 これなら余裕で振り回せるじゃん!


 「伏せろ、マスター」


 剣を構え、一歩前に出る。


 「っ!」


 「スマブラのリンク上Bいきまーす! シャアーァ!!」


 その場で全力回転! 剣を外に向けたまま、ぶんっ!


 「ガ!?」「グボッ!?」


 ――当たってないはずなのに。


 周囲の魔物たちが、横一線にスパーンと真っ二つになった。

 木も、テントも、でかい岩も、スパーン。


 「…………」


 真っ二つにされた犬魔物から、臓物と血がドバーッ。


 ドチャッ。


 うわ、グロッ。


 「うぷ……」


 吐き気を必死にこらえながら、マスターだけを見る。


 「これで全部か?」


 決まった。完璧に決めた。

 俺、今すっげぇかっこいい……って思った、その時。


 「おげろろろろろろろろろろろ!!」


 「うわぁあああ!? マスター!?」


 うちのマスターが、めっちゃ全力でゲロってた。


 「……大丈夫か?」


 いや、マジでもらいゲロしそう……。


 剣はちょっと封印しよう。精神的にキツい。

 ゲームと違って、これ全然スッキリしないやつだ。


 「……笑っちゃいますよね……」


 「ん?」


 「冒険者なのに……あんなことで……」


 「…………笑わないよ」


 マスターを見て、ふっと息を吐く。


 「命を奪って何も感じない奴が、俺のマスターじゃなくてよかった」


 ――なんかそれっぽいこと言っとこ。フォロー、フォロー。


 「っ……」


 マスターは涙をこらえて、ぎゅっと目を閉じた。


 「さて。話したいことは山ほどあるけど、とりあえずここを離れよう」


 できるだけ、あのグチャッた死体を見ないようにしながら。


 「う、うん……」

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