第6話 概ね理解!……暇!

 「ふむふむ……なるほど」


 マスターがギルドに行く前に、家にいくつか資料を置いていってくれた。


 「紙……っていうか、魔物の素材でできてるから“魔皮紙”って言うらしい」


 手元の資料は、マスターが学校に通ってた頃の教科書らしい。

 しかも、文字は普通に日本語。

 ……たぶん、女神様の配慮だな。


 この世界では、学校に行くのは自由みたいだ。

 でも、ある程度の知識がないと生きていけないから、みんな自然と通うらしい。


 冒険者ギルドも、手続きとかだけじゃなく、ちゃんと魔物討伐の依頼も受けてるみたいで安心した。


 「……“魔物”っていっても、魔王の手下じゃなくて、魔法を使う動物って意味らしい」


 イメージしすぎてごっちゃにならないように気をつけないと。


 「うん、だいたい分かった。あとは実戦、だな」


 とはいえ、今ここで家具ぶっ壊すわけにもいかないし……。


 「ま、ギルド登録が終わったら依頼を受けられるって言ってたし。それまではステイ、ステンバーイだな」


 マスターの職業は【テイマー】。

 つまり、俺を使って狩りをする人。


 「本来なら、魔物を半殺しにして『契約の鎖』で縛るらしいけど……マスターは抜け道を使ったっぽいな。だから俺がここにいる」


 ──異世界召喚。

 なんか、こう、夢がある響きだ。


 「普通のラノベだと、身体能力がめちゃくちゃ上がってたりするよな」


 でも、正直、どれくらい強くなったか分からない。

 死んだらセーブポイントに戻る主人公もいたしな……。


 「いや、でも女神様が“最強の体”って言ってたし、きっと大丈夫だろ」


 そう言って、そこらへんの座布団を半分に折って、ごろんと寝転がる。


 「……暇だ」


 マスターが出かけて、何時間経ったんだろう。


 「あ、そういや、名前……まだ名乗ってなかったな」


 本名の“タカノリ”でもいいけど、異世界で本当の名前晒すのはちょっと怖い。

 ここは、ゲームで使ってたハンドルネームにしておこう。


 ──ネバー。

 “ネバーギブアップ”から取った名前だ。


 「なかなかいいセンスだな、俺」


 なんて自画自賛しながら、ぼーっと天井を見上げていたら──


 ____________


 「お?」


 突然、空中に光が広がった。


 展開された魔法陣。

 その中心に、ぐいぐいと引っ張られる俺の身体。


 「うおおおおお!?」


 抵抗もむなしく、俺はそのまま光の中に吸い込まれていった。

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