第13話 ポップコーンとキャンディの魔法

『ウィル。悪いことは言わない、やめておけ。死んだ者を生き返らせる方法など存在しない』


「ありますって」


 少し苛立ったようにウィリアムが答えた。

 疲れているのか、余裕が無さそうだ。


『お前はなにを見たのだ。私の資料からなにを読み取った。なにか勘違いをしていないか?』


「してませんっ!!」


 ウィリアムが怒鳴り、テーブルの上の杖や呪具が鋭く鳴った。


 それ以降、ウィリアムは私がなにを言っても返事をしなかったし、私もいよいよ魔力の残量が少なくなってきた。目に見える世界がぼやけている。音もどこか遠く、粗い。おそらく、そろそろ存在自体が危うい。


 不本意ながら、私は黙って弟子を見守るほかなくなっていた。


「さあ、準備は整った。ポップコーンとキャンディの魔法だ!」


 先程の苛立ちが嘘のように明るい声が響いた。


 魂が摩耗して、ぼやけて、すべてが粗くなった世界で、ウィリアムの呪文が不思議なほどクリアに響いた。


 そしてなにより私は、幼き彼と出逢った日の光景を鮮明に思い出していた。


《つづく》

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