ゼニスという“地獄に一番近い街”で、冷めた主人公ヴァイスと、伝説のハイエルフの少女リリィが出会う導入に一気に引き込まれました。
ヴァイスは決して善人ではなく、どこか突き放した視点でこの世界を眺めているのに、気づけばリリィとの関わりの中で少しずつ人間味が滲んでくるのが絶妙です。
リリィが言葉を覚え、感情を取り戻していく過程は、派手な展開こそないものの丁寧に描かれていて、二人のやりとりが微笑ましく、時に切なくも感じました。
悪徳や暴力が当たり前の世界で、小さな日常の成長がひときわ温かく感じられる、不思議な読後感。
シリアスな背景とホームドラマが同居する、“優しいダークファンタジー”として今後も続きが楽しみです。