第32話 魔法石編 その9 仕切り直し
コッキング式のエアライフルを持ち、つぶやくように話す親方。
「しかし・・・ よく気付いたな?」
「親方のアイデア、これなら何とかなる!と思ったんですけど・・・
ちょっと心配になっちゃって、試しにレバーを引っ張ってみたら!
あたしでも簡単にいけちゃったんで、あ、これはダメだと。」
「そうか・・・ やっぱり間に合わせってヤツはろくな事にならんな。」
親方とパティのやり取りを見ていたケイティが口を挟んだ。
「え、おじいちゃん・・・ 中止の原因って、ソレ⁉」
「ああ、このポンプ式のヤツ、やっぱダメだったみたいだ。」
「あたし、てっきりコレの事かと思った。」
ケイティの一言に、ハッと気付くパティ。
同時に思い浮かんだのは・・・
「パティちゃん、これ見て。全然ダメなの!」
やはり、あの不格好な銀色の拳銃だった。
ケイティから手渡された途端、
「うっ!」と、思わず声が出てしまったパティ。
なんとか我慢して操作を試みるも・・・
引き金、撃鉄は完全にロックされた状態だった。
「あー-っ、やっぱダメだあ!!」
と、堪えきれない様子でケイティに返すパティ。
そこへ、何か作業していた親方がその様子を見て・・・
肝心な事を言った。
「それ、アイテム鑑定屋へ持ってって見てもらえ。今、紹介状書いてやる。」
親方が書いた紹介状をみてみると、初めにこう書かれてあった。
〝まずはギルド受付へ行って話を通してからだ〟
それと、赤いインクで書かれてあった謎のワード。
『アカジ』
早速、ギルド受付へ持っていき見てもらうと・・・
「分かりました。 今、在室してるかどうか確認してみますね。」
その受付姉さんがなかなか戻ってこない。
「・・・・・・」
「パティちゃん、『アカジ』ってどういう意味だと思う?」
「それだけ重要な紹介状なんですよ、おそらく。」
「・・・・・・」
受付姉さんがなかなか戻ってこないので、仕方なく簡易応接間でお茶をすすって
いるケイティとパティ。 そこへ・・・
「あなたたち、ずいぶんとヒマワリしているじゃない?」と、偉そうな物言いの声。
空のように青い、とんがり帽子とローブ。
黄金色に輝く魔法石が先端部に備え付けられた杖。
古代ギリシャの哲学者が履くような、紐付けで構成されたサンダル。
どうやらその手の職業の人が身に着ける装備ばかり。
というより・・・
魔力付与のされた衣装は他業種の人にとって弊害が多く、最近では敬遠される傾向に
あった。
「ここらへんじゃ見かけない顔だけど、ここはハンターズギルドなのよ?喫茶店じゃないの! 分かったら、サッサと出ていきなさい!」
ポカンと、その派手な衣装の女性を見ているケイティとパティ。
「聞こえなかったの!?」
「パティさん、アポイント取れましたよ!」
キレかかった声と受付姉さんとの声が被さった。
そのアポイントメントが取れた住所が書かれたメモを受取るパティ。
何やらケンカに発展してしまいそうな言い合いしている、魔術師らしき女性と受付姉さん。
メモを見ると時刻が指定されていた。 なんと、あと10分しかない。
「ケイティさん、急ぎましょう! 走れば間に合います!」
「ええ~っ!? 場所、知ってるの?」
「道一本ですよ!」
二人は分かりやすい目印の「山の城野戦病院跡」を目指した。
目的の場所はその隣らしい。
『赤い羽根村』方面の主要馬車道を露天商が並ぶ専用歩道沿いに進めば、
これまた分かりやすい分岐点に到達する。
二又に分かれている、左側の『東十番墓地地区』方面専用馬車道。
その突端にあるのが、分かりやすい目印の建物だった。
「ここで・・・ いいのかな?」
見た感じ、奇妙な造りをしていた。
ドーム型の比較的大きな建物だが、窓は見当たらない。
表札は無く、何の文字も書かれていなかった。
あるのは玄関口らしきドアだけ。 人の気配も無い。
その前で立ち尽くしているパティ。
「どうしよう・・・」
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