ふわりと揺蕩う、海色の風景:お題『くらげ』

 楽しげな喧騒が遠くに聞こえる。

 水族館の中でも数えるほどにしかない、弱々しい人工的な光で照らされた薄暗いブースのひとつ。ホールのような開放感がある一方で、その暗さも相まってか人気の少ないこの場所は、まるで他から切り離されたかのように静かだった。

 中央に設置された円柱の水槽は、上下からの明かりに照らされて、まるでスポットライトを浴びているかのように一際目立っている。

 青白く輝くその中で、一匹のくらげがゆっくりと泳いでいる。スカートのような透明な傘がとても長い糸のような触手が、ふわりと、スローモーションのドレスのように広がっていて。ただただ綺麗だと思える。

 幻想的なその光景をぼんやりと眺めていた。

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