第十八話 杖タンク 2
身動きの取れないアリをツグミとシズが倒し、一旦落ち着いた。
「ユウ、俺の靴いい加減に解凍して」
「お、おう。範囲攻撃ムズイな、普通にフレンドリーファイアするし。で、どうやって解凍する」
「知らねーよ。凍傷になるって」
「靴脱いだら?」
ツグミの一言で俺とカエデは顔を見合わせ「正解!」とツグミを二人で指さした。
「靴取れるまで、ちょっとフィードバックしよ」
カエデが自分の靴を見ながら提案し、ダンジョン内ではあるが話し合いが始まった。
「そうですね。ユウの弱点も分かりましたし」
「そうだな、固まっている集団に不意打ち的に攻撃するのはいいけど、今みたいな俺らを感知して襲ってくる敵には弱いな」
「でも今のはちょっと余裕かましすぎてたよね」
手厳しいツグミの進言にシュンとなる俺ら。
「ちょっと甘く見てたのは否めないな、俺らこのあたりの敵ワンパンだったしさ」
「俺、また閃いたんだけどさ、浮遊する盾を出してさ半自動で受けれる魔法ってどうよ?」
「閃くのは無料だから良いけど、再現できるの?」
「わからん、ちょっと待ってね、えーと...盾は出来そうだけど半自動はむずい」
「ちょっとよろしいですか?そもそも、そのタンクと言うものは必要なんですの?」
シズらしい核心を突いた質問に一同固まる。
「フォーメーションを決めてたら要らんかもな、危なくなった時のサポートも決めておけば、何も一人にヘイトを集中させる必要ないんじゃないか?」
「次の敵で試してみる?」
しばらく俺は考えて挙手をした。
上がった手を見てカエデが「はい、ユウ君」と俺に発言を促す。
「これくらいの強さの敵なら基本居なくてもいいかもしれんが、敵が強くなってきたら必要になるかもしれん」
「うん、それはその敵と戦う時じゃないと分からんな」
「そうだな、でも不必要では無いって事よ」
その後フォーメーションとサポートの確認をし帰路に就くことにした。
ふとシズの動きが止まる。
「敵か?」
俺の問に頷き「こちらに六匹居ます」と出口とは違う方角に弓を傾けた。
「じゃー倒してから帰ろ」
ゆっくり近づきモンスターを確認する。
「ブレード・ラットだな」
「サンダー行くから、その後は各々の攻撃で」
「わかりましたわ」
カエデとツグミは頷き、戦闘開始を待っている。
「んじゃ、行きますよっと、サンダー」と杖にイメージを送る。うん? 俺はイメージを杖に送ってるのか。
サンダーがブレード・ラットにヒットし、回りが痺れて動きが鈍る。
それを確認し各々が攻撃を加える。
俺は上の空でその風景を見ながら、もう一度魔法のイメージと杖の関係性を考えた。
腕を組み俺は何の気なし杖に話しかけてみた。
『お前は俺のイメージを魔法にしてるのか?』
『そうだね、君のイメージは面白いから私も楽しいよ』
「なるほどねぇぇーーーーー?」
俺の突然の叫び声に皆びっくりし俺を注目するも、俺も何をどう説明していいか分からないので誤魔化そうとした。
俺の次にツグミが「あーーーーー」と叫び注目を奪った。
「どうしたツグミ?」
「カエデ君W.A.R.D確認してみて、びっくりするよ」
カエデは腕のW.A.R.Dをみると「マジか!レベル2って何?」と驚きを隠せてない。
「あら、レベルがあるんですか。このW.A.R.D、成長するんですね」
「一回戻って、職員さんに確認してみよ。結構こいつの機能は秘匿されてんじゃねーか?」
カエデはW.A.R.Dを指さし「まだまだ隠れた性能があるはずだ」とウキウキしているように見えた。
ゲートにW.A.R.Dをかざし退ダンし、受講館の隣にあるダンジョン受付に四人で行く。
途中シズがヨシコさんにお迎えの電話をしているのは抜け目ない。
通称ギルドと呼ばれるこの施設はモンスターの核の買い取りも行っている。
少ない職員を見つけて手を振り対応してもらった。
「これ、お願いします」
カエデが倒したモンスターの核を出し、ツグミがW.A.R.Dからキュアポーションとスコーピオンポイズンを出した。それを見た職員の顔が一瞬だが目が鋭くなった。
「これもお願いします」
職員さんが「へーキュアポーションでしょ、やったね。後はスコーピオンポイズンだね、二つとも買い取りでいい?」
「どっちがいいんすか?買い取り以外にもオークションもあるんですよね」
「オークションはもっと高い物を売るには良いけど、これくらいの値段ならこっちで買い取りでも変わらないんじゃないかな、オークションだと手数料が二十パーセント掛かるから」
「そんなに高くないですか?」
「えっと、キュアポーションのGで今なら五十万、スコーピオンポイズンで三十万かな今の買取価格、あとね毒系はオークションに出すことが出来ないから」
「なるほどね、って八十万と核の分で二万ちょいか」
カエデとツグミが笑顔でお金を受け取っている。
忘れてんのかこいつら?
「ちょっと質問いいですか?」
「私の知っていることでしたら、お答えできますよ」
「ツグミがW.A.R.Dからアイテム出しても驚きませんでしたよね、なんで秘密にしてるんですか?」
「知った時の驚き、アドレナリン出なかった?そういうこと」
「まだまだW.A.R.Dには隠された機能あるんですか?」
「見つける楽しみを奪うことは出来ないの」
「あるんですね、ありがとうございます」
何とも暖簾に腕押しな受け答え。でもこれが、職員の必須スキル:マニュアル対応なのかもしれない。
一人蚊帳の外のシズは「さっぱり分かりません!」と顔に書いてあった。
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