第十六話 アイテムボックス!?

 モンスターの核以外がドロップしたのは初めてだ。

 ツグミが「なんかポーションみたい」と二本ある容器を手にした。


「えっと、キュアポーションGとスコーピオンポイズンだって」

「え、なんでわかる?」


 驚いた顔のカエデがツグミに尋ねると、ツグミは無言で自分のW.A.R.Dを見せ「これ」と指差した。


「何でもありだな、鑑定も出来る優れものだ!」


 カエデはご満悦の表情で「いったん戻る?」と提案してきた。


「まだ一戦目だし、戻るのめんどくさいな」

「そうですね、カバンに仕舞っておきましょうか」

「でも、瓶だし割れる危険性あるよ、もし高価で買い取ってくれるアイテムならもったいないよね」


 どうするか悩んでいて俺はふと閃いた。


「ちょっと閃いたんだけど」

「なんだよ、もったいぶるなって」

「W.A.R.Dに武器収納できるよな、もしかしたらアイテムも収納できないか?」

「そりゃ流石に何でもありすぎじゃねーか?」


 横でこそこそしていたツグミが「ユウ君すごいよ、収納できた!」と驚きの報告をしてきた。


「そんなこと講習会で言ってないよな、この情報売れねーかな?」

「案外、秘密事項であいつら知ってる情報かもしれんぞ」

「SNSでの発信は?」

「あがめられるかもしれんが、金にはならんな」

「あら、どうしてそんなにお金に執着するんですか?」

「そりゃ、シズの親に迷惑じゃないかもしれんけど、支援してもらってるからな。おれ達一応大人だし、そろそろ自立したいって思うんだよ」

「そういうものなんですか?」

「その辺のカルチャーは違うんじゃねーかな、俺ら一般人だったし」


 ちょっと変な方向に行きそうなので、俺はパンパン手を叩き「次行こうぜ」と次のモンスターを探すことを提案した。


 Gランクのダンジョンは坑道型ダンジョンと呼ばれる構造になっている。

 ランクが上がればフィールド型の方が多くなるらしいが坑道型も非常に少ないが世界に何か所かあるらしい。

 Gランクでも極稀にフィールド型があるがその場合はワンフロアしかないダンジョンになると聞いた。


 ちなみに船橋運動公園ダンジョンは地下7階層のダンジョンで最下層にボスモンスターも居るらしい。


 俺らはW.A.R.Dのオートマッピング機能で下層にいく階段を見つけ降り始めた。


 初の地下二階だが、どこか余裕がある。

 一階をワンパンで倒せる自信とモンスターの強さを考えると、四、五階までは余裕そうだ。たぶんカエデもそう思っているだろう。


 暫く二階を散策しているとシズがゆっくり顔を動かした。


「居ましたわ。この先七十メートル先、五体のモンスターが居ます」

「シズが感じられるのは七十メートルなんだな。感覚なのか七十メートルってのは?」


 俺の質問にシズは「頭に七十メートルと通知?される感じです」と教えてくれた。


「初の五体のモンスターだ、ツグミはタンクに徹してくれ。ヘイト独り占めしていいからな」

「わかった……けどなんか嫌だなその言い方」

「ごめんごめん、俺らって防具紙みたいなもんだからさ、お前に攻撃が当たる事の無いよう努力するからヘイト管理頼む!」

「カエデ君、努力なの?……頑張って無傷で帰してね」

「お、おう、任せとけ」


 そんなやり取りをしながら移動し、現れたのはGランク-:ブレード・ラットだった。

 最近気が付いたが、【Gランク-】はどうやらマイナスらしい。マイナス、ノーマル、プラスが有るらしくGランクでも三段階の強さがあるようだ。


「ブレード・ラットなら、いいだけ瞑想で倒したから大丈夫だな」

「そうだね、戦い慣れてるから気が少し楽だよ」


「どうする、パーティモンスターは必ずリンクするからな、何時も通りの作戦」


 俺がカエデに聞くと「余裕っしょ、こいつらいいだけ倒したし」と既に戦闘態勢に入っていた。


「了解。二匹はスロウ入れれんと思うからそのつもりで」

「あいよ!」

「いつも通り、突っ込んできた二匹をツグミがヘイト取って一匹シズ、もう一匹を俺、あとユウも攻撃出来たら参加」


 カエデが簡単な作戦を告げる。


「ンじゃー行きますよ」


 俺は皆にバフを掛け、モンスターにデバフを掛ける。範囲でかけられないのが、ほんと歯がゆい。

 三匹目を掛け終わるころには既に二匹がこちらに牙をむいて走ってきている。


「こっちに来てね!」


 最近のツグミはこの掛け声が挑発の様で、ヘイトがツグミに移る。


 シズの攻撃は既に二射目に移っており、スロウの掛かっているブレード・ラットに向けて狙いを定めていた。

 カエデはシズの射線に入ることなく移動をし、二匹目を両断している。


 俺も狙いを定めアイスランスを打ち込み、あっという間に五匹のブレード・ラットは黒い霧となって消えることになった。


「僕『こっち来てね!』しか言ってないんだけど、無双できない……」

「お、おう、でもタンクってそんな感じじゃね?」

「武器、間違ったかも……」


 無双を夢見るツグミは下を向きちょっといじけモードに入っている。


「ツグミ、戦斧はゲームではタンクだったかもしれんが普通に攻撃出来るんだろ」


 俺はツグミを鼓舞するため声を上げた。


「うん、出来るけど」

「俺がタンクやってやる。三人がアタッカーでどうだ」


 カエデの目が点になり「お前大丈夫か?」と心配してきた。


「考えてもみろよ、ここはゲームの世界じゃないんだぜ。ゲームに縛られて可能性潰して何になるんだよ」

「そうだけど、お前の武器杖だぞ」

「可能性潰すなって、杖のタンク居たっていいだろ。いい魔法閃いたし、あれ?俺ってバッファー、アタッカー、タンク?いや、自分で武器の性能決めるの違うんじゃねーか?」

「いや、冷静になれって、何言ってるか分からんぞ!」





   

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