第八話 ダンジョンハンター講習会 8

「ちょっと休憩してから、今度は違うモンスターともう一戦してみよう」

「今度はちゃんとスライムくらいの召喚してくださいよ。無双したいじゃないですか?」

 

 俺はツグミのギャップに「ツグミってそんなキャラなの、ちょっと意外」と思わず口をついてしまった。


「あー僕、ガチのゲーマーなんで。“俺つええ系”大好きっす!無双って、正義じゃないですか?」


 かわいい顔したツグミの発言にはギャップ萌えしているカエデが、妙にいやらしい目でツグミを見始めた。

……お前はロリコンか?と思わずカタパンで意識を狩った。


「シズは大丈夫か、もう一戦いける?」と聞くとシズも目を輝かせ「行きましょう。この弓をもうちょっと使ってみたいです」と素直な思いを告げてきた。


 我に返ったカエデは「今度は何を召喚しましょうか?」とW.A.R.Dを操作しモンスターを選んでいた。

 ツグミがカエデに近づき「どんなモンスターが居るの?」とW.A.R.Dを覗き込むようにカエデの顔に顔を近づけた。


 ツグミにしたら無意識なんだろうがやられたカエデは顔を赤くして「ちょ、近いって、いい匂いするし」と変なことを呟いていた。


「シオン君を病院送りにしたラットは居ないの?違うモンスターだけどさ仇討ちたいじゃん、エレーナ教官に一刀両断されてたしそんなに強くは無いんじゃない」

「ちょっと近いってツグミ、小学生みたいな体型でも俺ヤバい」

「カエデ君はヘンタイなの?」

「そうだ、俺は変態紳士だ!」

「なに開き直ってイチャイチャしてんだよ!カエデ、お前ときめいてんじゃねえよ!色々立ち上がるな!!ツグミもあまりくっつかない、俺が嫉妬する」


 二人して少し顔を赤くしているのを見てシズノが静かに「変態紳士と未成熟な乙女、そういう恋愛もあってよろしいかと」となせか応援する発言をぶち込んだ。


「ちょっと仕切りなおそう、そういう場じゃないからここは、お前らもシズも一旦落ち着こう。違うだろ!今は戦闘モードだろ!?…な?なっ!?続きは……その……帰ってからにしてくれ!!」


 俺もなぜかテンパって何を言っているか分からんが、今は次の一戦に集中しようと皆に呼びかけた。


「ツグミはシズの隣に待機、ユウちょっとこっちに来てくれ」

 

 カエデは気を取り直したのか真剣な顔になり俺を読んだ。

 俺は 「どんなモンスター居るんだ?」と聞くとカエデは「俺、ロリコンかもしれん」と告白してきた。


 変なのは百も承知だが今回のは違う、俺はそう思う。

 俺は優しく告げる。


「今更、俺は知ってたぞ!だが、全て忘れろ、俺が頭に膝打ち入れてやろうか?記憶飛ばせるぞ」


 俺のやさしさだ、受け取れと思い提案したが即座に却下された。


「いや、ちゃんと我に返ったし大丈夫だ。そんな痛いのはいらない。モンスター選ぼうぜ」

「最初からそうしろよ。で、居そうなのかあのネズミ?」

「名前分からんから確実じゃないけど、この【 Gランク-:ブレード・ラット 】ってのがそうだと思う。すれ違いざまにアキレス腱切ってただろ」

「Gランクマイナス?クリムゾンラットはダダのGランクだったよな?ノーマルとマイナスの差か...よし、じゃそいつを召喚しようぜ」


 俺がツグミとシズに次は【 ブレード・ラット 】を召喚することを告げ、カエデに合図を送った。


「今度はサクッと倒せますように!サモン、ブレード・ラット」


 非常にシンプルな魔法陣からシオンを襲った大きなネズミが現れた。


「ビンゴ!ユウ、バフ、デバフ頼むぞ」

「了解!」


 俺は先ほどの戦闘と同じようにシズノ、カエデ、ツグミにそれぞれのバフを唱え、モンスターにスロウを掛けた。


「よし、OK!シズ良いぞ」

「承知いたしました。では行きます」


 シズノは静かに弦を引くと今度はゆっくりと風が吹きはじめつむじ風のような矢が現れた。


「はいっ!」


 放たれた矢は真っすぐブレード・ラットにとび眉間に見事にあたった。

 ブレード・ラットはつむじ風の矢と同じように回転しその場から消えた。

 シズの攻撃がクリティカルだったのか、一瞬で霧散した


「あら」

「えーーー」

「あれ?」


 三者三様のリアクションでその場を見ていた。


「クリムゾン・ラットが強すぎたんじゃね?」


 俺は今起きたモンスターの消滅からクリムゾン・ラットの異常性を感じながら(ノーマルとマイナスの差じゃねーよな。これは報告案件だな)と考えていた。


「これはちょっと弱すぎじゃね?」

「だよね、無双できそう」

「よし、今度は三匹召喚してみよう」

「いいね、無双無双!」


 カエデとツグミで勝手に盛り上がりブレード・ラットを三匹召喚していた。


「え?早いって」

「ユウとシズは見ててくれ。俺とツグミでやってみる」


 既にツグミは一匹のブレード・ラットの頭に斧を振り下ろしていた。

 鈍い音と共にブレード・ラットの頭蓋骨が陥没しその場で消滅した。しかし残り二匹が同時にツグミに襲い掛かる。

 カエデは一匹を「しゃーー」と叫びながら 袈裟斬りし消滅させたが一匹がツグミのアキレス腱に向けて素早く移動していた。


 俺はなんとなくシズを見ると既に弓を引いており「はいっ!」とツグミの足元に矢と射った。

 素早く動いていたブレード・ラットだったがまるで誘導されているかの如く矢に額を射貫かれた。


「詰めが甘いよ、お前ら。シズが居なかったらツグミおまえシオンの二の舞だぞ、カエデおまえ一応リーダーなんだからな!」

「ごめん、調子のちゃった」

「俺、好きでリーダーやってる訳じゃねーし」

「あら、私はカエデがリーダーで皆をまとめいると思いますよ」

「え、そうか。シズに言われると、なんかやる気出てきた」

「俺はお前のその単純さが好きだけどな」


 その後ブリーフィングを重ね十五戦ほどして終わりにした。





  

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