第三話 ダンジョンハンター講習会 3

 俺とカエデはしばらく辺りを観察し受講者を吟味していた。


「アイツ一人じゃないか?」


 カエデは一人のミリタリーファッションの男の子?を顎で示しニヤリとした。

 ショートカットでひときわ小さく目を引く、かわい中性的な顔立ちのその人物は、たしかに一人きりだった。


「ちっちぇーな、小学生か、成人してないと講習会受けれんよな俺行く?」

「ここは保護者ユウの出番じゃないっすか!」

「なんだよ保護者って。俺、彼女もいねーのに子供がどこからでてくるんだよ?」

「なんかモジモジしてるし。俺、保護しに行くわ」


 カエデは席を立つと目当ての男の子に笑顔で話しかけていた。

 少し驚いた顔をしているカエデに俺はニヤニヤが止まらない。

 俺は微かな視線を感じ、振り返ると一人のお嬢さんが俺を見つめたいた。

 カエデはほどなく、男の子と二人で戻って来た。


「こいつイソノ、なかなかのイケメンでしょ」

「あ、よろしくお願いします。僕、ケンゴウ ツグミって言います。よく間違えられるけど、一応じゃないか、ちゃんと成人してます」

「え、あっあぁ~えっ、僕?ツグミ??小っちゃいけど未成年じゃないの?」

「小っちゃいは怒りますよ!これでもちゃんと成人女性です!!」

「ごめんごめん。俺クロイシ ユウっす。イソノじゃないから、よろしくね!」


 カエデの驚いた顔はこういう事だったのか。


「一人で来たの?そんな感じには見えないけど」

「それ、俺も気になった」


 カエデが同調する。


「二人で、幼馴染のシオン君と来たんだけど...」

「まさかあの金髪君?」

「......うん、シオン君見た目はあんな感じだけど、昔から正義感が強くて僕こんなんでしょ、よく助けてくれてたんだ。調子に乗ると頭のネジなくなっちゃうけど、ホントは良い人なんだ」

「なんだよ頭のネジなくなるって!でも意外だな、ただの調子コキ野郎かと思ったけど、良い奴なんだ」

「だからイソノは人の見る目が無いんだよ」


 俺はため息をつき「なぁ、ナカジマいい加減にしろよ」とちょっと語気を強めてカタパンした。

 また、あの綺麗なお嬢さんと目があった。俺に気があるのか?パーティに入りたいのか?


 シオンとツグミが和気あいあいとしだしたころ、例のお嬢さんが話しかけてきた。


「ねぇあなた達三人ですの?私も入れてくれないかしら」


 凛とした佇まいを装い話しかけてきたのは、同年代ぐらいのお嬢様で美しかった。


「な、なに、俺にっすか?」


 俺がテンパって答えになってない答えを返した。


「ユウ何テンパってんの、パーティに入りたいんですよね。」


 カエデは余裕な表情でお嬢さんの対応をしてくれた。


「俺ナカジマ カエデ、こいつがクロイシ ユウ。こちらの方が、ケンゴウ ツグミちゃん」

「はい、ケンゴウ ツグミ、成人です」

「あら、小さくて可愛い!あっ私はセイジャクジ シズノ、年齢は二十二歳」

「僕も二十二です。奇遇ですね」


 カエデが胸を張り「俺らも二十二だから俺ら先輩ね!」と宣言したところで俺は正気に戻った。淡い期待だったか...

 

「なんで先輩なんだよ?カエデの言う事は置いといて、セイジャクジさんは一人で参加?」

「私のわがままで来たんですけど、私の家はちょっと古い家柄で、爺がうるさいの。パーティ組めなきゃ『帰りますよ』って言い出しそうで……年齢の近そうなあなた達に声を掛けたの」


 カエデは講習所の脇に佇む一人の老人を見て呟いた。


「あの人だろ爺って、俺初めて見た。でもヤバいなあの爺さん。見た目普通だけどやってるなあれは」


 カエデの観察眼がヤバい奴と認識したらしい。


「唐突な質問だけど、セイジャクジさんは昔の華族とか?」

「あらよくご存知ですね、えっとクロイシ君で良いのかしら?」

「ユウで良いよ」

「では私もシズでお願いしますね」


 一応自己紹介的な事をしているとエレーナ教官の声がざわついた室内に響いた。


「大体パーティが組めたみたいだな。では、W.A.R.Dについて説明を始める」


「今からかよ……」


 どこかの席からぼやきが聞こえたが、エレーナ教官は気にせず続けた。


「要点だけ伝える。W.A.R.Dは――〈導きし者〉、我々が異星人に付けた名称だ。が提供した、我々の科学では未だ解明できない異物だ」


 静けさが講義室を包む。


「この端末は使用者と共に“成長”する。常時装着し続けることで、徐々に装着者に合わせた性能に“進化”するらしい。だがその原理は未だに不明だ。再現も、解析もできない」


 さらに教官は、自らの腕をまくって見せた。


「私のW.A.R.Dは、すでに肉体とほぼ一体化している。必要に応じてレーザーブレードなどの装備を“意識のみ”で展開できる。お前たちにもこれから武器を選んでもらう――これは単なる通信機でも記録装置でもない。“己自身”である」


「……電源とかは?」


 誰かが恐る恐る聞いた。


「無い。電力は不要だ。装着時に生じる微細な繊毛が、体内から微弱な電気を取り込んで稼働しているとされている。これもまた、詳細は不明だ」


 言い終えたエレーナ教官の目は、全員を一人ずつ見渡していた。


「お前たちはこれから、この“異物”と共に生きていく。それがダンジョンハンターだ――肝に銘じておけ」


 その後に簡単な機能の説明があった。基本的にW.A.R.Dに触れて意識を集中すれば項目が現れ指先で操作する。育てば?触れることなく自分の意識下で操作可能とのことだ。


 エレーナ教官が展開しているパーティを四人で組んでみた。


『これって、テレパシーいけるの?』


 無言で俺を見ているカエデから直接脳に意識が届いた。


「マジか!」

「どした?大丈夫か?」


 突然の俺の大声にエレーナ教官が心配になったのか俺に声を掛けた。


「え、ちょっと待って、今……カエデの声、頭に直接……?テレパシー!? これ、W.A.R.Dの機能なんですか?」

「おぉ、そうだ可能だ。言語が関係ないので便利な機能だぞ」


 俺がいぶかしげな顔で教官を見ていると「忘れていたわけでは無いぞ、これから説明をする」と少し頬を赤くして説明を始めた。





   

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