第14話

結局、剣道部の試合が終了してからバレー部に駆け付けると、ちょうど試合が終了した所だった。

「あ!相原さん。今、ちょうど試合が終わったんだ」

悲しそうに呟く中村さんに、私は試合が負けたことを悟った。

そっと二人で帰ろうとしていると

「あれ?お前、来てたの?」

突然、背後から紺野先輩の声が聞こえた。

驚いて振り向くと、紺野先輩が荷物を持って近付いて来た。

「あ……紺野先輩」

ぽつりと呟いた私に

「何、辛気臭い顔してんだよ!」

そう言って私の鼻を摘むと

「試合は残念だったけど、まぁ、お前が駆け付けて来たなら良しとしてやるよ」

と言って微笑んだ。

私が先輩に溜め息を吐いて

「紺野先輩……私だから良いですけど、そういう事言うから誤解されちゃうんですよ」

と言って苦笑いすると、紺野先輩はきょとんとした顔をしてから

「?そうか?まぁ、じゃあ……気を付けるわ」

って答えて首を傾げた

「でも……残念でしたね」

ぽつりと呟いた私に、紺野先輩は小さく笑って

「まぁな」

と答えると

「まぁ、万年一回戦負けだったから、良かったんじゃね〜の」

って答えると歩き出した。

「悪い、俺、戻るわ。お前らの姿が見えたから来ただけだから」

そう言ってバレー部の人達の方へと歩いて行くと、ふいに振り向いて

「夏も、取材に来いよ」

と言って片手を挙げて去っていった。

私と中村さんは学校へ戻り、今日の試合結果を模造紙へと書いて報告作業。

職員室の前に貼り出していると

「おぉ!バレー部は1回戦は勝ったのか!」

「万年1回戦負けなのに、頑張ったなぁ~」

職員室の先生達が出て来て、私達が貼り出している新人戦の結果を楽しそうに眺めながら

「剣道部は凄いなぁ~。3回戦目突入か」

「やっぱり新聞部が取材に行くと、やる気が出るんですかね」

と、数人の先生達が話をしている。

「中には、授業をサボるきっかけになるんじゃないか?なんて声が上がったけど、やはり行かせて良かったですね」

貼り出し終えた私達は、先生達の言葉に笑顔になる。

自分達が行って頑張れるなら、幾らでも応援したいって思った。

自分達の壁新聞を貼り終えて戻ると、3年生達の作成した壁新聞を手渡された。

「相原~、これもよろしく!」

新聞部に入部して、私はどうやら3年生の先輩達に嫌われているらしい。

面倒くさい仕事を押し付けられたりする事が、凄く多い。

でも……理由は分かっていた。

うちの中学は、生徒会の力が結構強い。

そんな中で、私は何故か副会長の菅野先輩と書記の紺野先生。議長の徳山先輩にまで可愛がられている。

1年でこれは、かなり生意気に見えるのだろう。

しかも菅野先輩以外は、男子っていうのも面白く無いんだろうなぁ~。

私は黙って先輩達の壁新聞を持ち、再び職員室の前へと向かう。

すると後から同じ学年の田上さんと宮野入さんが追い掛けて来て

「私達も終わったから、みんなでやろう!」

そう言われて、私は笑顔で頷いた。

和気あいあいと壁新聞を貼っていると

「何で3年生の分を、1年生が貼ってるの?」

と、新聞部の顧問、福田先生が私達の背後に立って呟いた。

私達は顔を見合わせて

「あの……ついでだったので……」

そう答えると、福田先生はもう1人の顧問である望月先生とアイコンタクトを取り

「もう少し我慢したら、3年生は引退するから。あんた達、負けちゃダメよ」

って、頭を撫でられた。

福田先生はハーフみたいな綺麗な顔をした英語担当の女性の先生で、望月先生はお笑い芸人の光浦靖子さんみたいな顔の先生だった。

基本的に、福田先生がハッキリ物を言う感じで3年生の先輩達に嫌われていて、望月先生は大人しくて舐められている感じだった。

でも、2人はなんだかんだと私達1年生を気に掛けてくれて、事ある毎に声を掛けてくれていた。

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