260.二つの目的
「旅の冒険者でドワーフでもないのによくご存知だ。そう、この山にはドラゴンが居ます」
渡り歩く者……アヤネの言葉を聞いてファーニルさんは静かに答えた。
ドラゴンへ会いに行くと推測していたけど、どう考えてもフレイムバードより脅威であるドラゴンへ会う理由が見当たらない。レスバと黙っていると、ファーニルさん話を続ける。
「実際、その方の言う通りドラゴンへ会いに来ました。やらなければならないことがあるから、ですね」
「少し近くの町で過ごしてきましたけど、そこまで困っている感じはしなかったんですけど?」
【そうですね……例えば他の国みたいに魔族が居るということも無さそうですし】
『……』
魔族のレスバがアヤネをチラリと見ながらそう告げる。魔王を乗っ取ってもいた当の本人は涼しい顔で目を閉じていた。こいつ……本当になんなのかしら……?
「確かに魔族はここには居ません。魔族が支配していたらしい、隣のロカリス国はギリギリのところを何者かに救われたと聞いています。逆を言えば魔族がいつ来るかわからない」
「まあ、そうかもしれないけど……」
『でもそれだけじゃなさそうだね?』
事情を話すべきか悩む。
アヤネが居なければすぐに話したと思うけど、こいつが黒幕ですなんて話をしたらどういう行動にでるかわからないからだ。
ひとまずアヤネに会話の主導をさせておこうかと黙っておく。魔族に対抗するためにドラゴンの力をというのは解るけど……
「……国に関わることなので申し訳ありませんが追及はしないでいただけると助かります」
【おっと重要な話なんですね。まあ、わたし達が聞いてもなにができるとも思えませんし、それでいいかと】
「どうだろうか……」
そこで騎士団長と言っていたガッドさんが話に加わってきた。心情としては『聞いてもらいたい』と思っている感じがある。
「なにか? ガッド団長」
「いえ……」
「これはドワーフの問題だ。人に話すことは無いさ」
「……」
横にいた同じ騎士団長のクレーズさんと顔を見合わせて肩を竦める。とりあえず変なことに巻き込まれないというのはありがたい。
などと思っていると――
『まあまあ。私たちも無理に聞く必要はないから言いたくなければそれでいい。ところで一つ提案があるのだけど、いいかな?』
「……? なんでしょうか」
『実は私たちは金に困っていてね。ドラゴンのところまで護衛をして金を得られればと考えている』
「は……!? いや、別に困ってないし!」
【いきなり何を言い出すんですかねこの美人さんは!】
「煽りになってないわよレスバ……」
と、それは置いといてもおかしなことを言う。
あたし達がドラゴンに倒されることを考えているのかもと推測するけど、恐らく単体であたしとレスバを相手にしても勝てるはずなのだ。それくらいさっきの戦闘を見ている限り差があるとわかる。
『お金はあった方がいいだろう? 他の地域には行かないといけないわけだし、ね?』
「……」
仲間を探しに行かないのかと暗に聞いてくる。もちろんそのつもりだけど、ロカリス国に行った後、メイディおばあちゃんに会えばある程度なんとかなると思う。資金はそこで相談だ。
だけど行かないという答えは出させないつもりらしく、視線で『着いていかなければこのドワーフたちを皆殺しにするけどいいか?』という雰囲気を醸し出していた。
「……仕方ないわね。だけどドラゴンと戦闘になったらあんたが戦いなさいよ? 言い出しっぺなんだし」
『おっとそう来たか。まあ、別にいいけど』
【戦うんですか……?】
「い、いえ、そんなつもりはありませんよ。しかし護衛か……」
レスバが不安げに聞くと、ファーニルさんは顎に手を当てて髭をなぞる。騎士が居れば、とは思うけど先ほどのフレイムバードとの戦闘を見る限り人数は欲しいといったところだろう。
「私からもお願いしたいところですね」
「オレもです」
「ふむ」
騎士団長二人も思うところがあるのかさっきであったばかりのあたし達に同行を依頼してきた。気乗りはしないけどアヤネが暴れるのは勘弁してほしいもんね。
【いいんですか……?】
「急ぎたいけど、あいつの意図もちょっと見ておきたいのはあるわ。どうせ強制的に連れて行こうって腹だろうし」
【まあ……】
小声であたしに話してきたレスバにそう返す。
彼女には言わないが、逆に一泡吹かせることができないかなとも考えていたりする。
「……では、申し訳ありませんが同行をお願いします。報酬はこれくらいで」
「結構。というか多いですね」
提示してきた金額は金貨五十枚。
今まで依頼で稼いでいた金額を考えるとかなり破格な数字ね。一応、多いかと聞いてみた。
「危険が伴うから当然と考えてます」
するとそう答えがあった。
戦うつもりがあるのかないのか……判断は難しいけど、最悪みんなを連れて逃げるくらいは考えた方がいいかもしれないわね。
『なんだい? 報酬はいい感じじゃないか?』
おそらく、こっちがピンチになってもこいつは助けてくれないだろうし。やっぱりまとめて片づけるつもりな気がするなあ。
「とりあえず少し休憩したら登山を再開しよう。ドワーフの祖先がその昔ドラゴンの祠を作っていてね、そこで会えるはずだ」
【はず……絶対じゃないんですか?】
「魔族との戦いで五十年ほど前に出現したきりだな。火の大精霊として戦いに参加した」
「……!?」
【……!?】
『……』
ガッドさんの言葉にあたしとレスバが驚愕の表情を浮かべて顔を見合わせた。そこでアヤネを見ると、うっすらと笑っていた。
目的は大精霊か。ウィンディア様しか出会ったことがないけど、もしかして先に始末するつもり? 確かにこいつにとって大精霊は厄介な存在かも?
そんな疑問を抱えたまま、あたしとレスバはアヤネを警戒しながら先を進むのだった。
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