231.顔合わせ

「オレはドライゼン。リースンのお供その一ってやつだ」

「私はアーデン。リースンのお供その二よ」


 レストランで食事をした後、僕とレムニティはこちらを見ていたという二人のお供を紹介してもらう手はずとなった。町の広場に移動して、挨拶を受けた僕はひとまず彼等を観察する。

 しっかりとした防具をつけ、背中に盾を背負った男の戦士はドライゼンさん。髪はいわゆるツーブロックというやつで、背も高い。

 そして黒に近い紫のローブと金属で出来たロッドを手にした女魔法使いがアーデンさん。栗色のショートボブがあまり高くない身長と合っているなと思う。

 しかしジト目で表情は薄い。だけど空いた左手でピースしている。無表情で感情の起伏が少ない人は初めてかも。

 夏那やレスバは騒がしいからね……


「僕は風太と言います。で、こっちが――」

【レムニティという】

「相変わらず愛想が無いわねえ。アーデンといい勝負ね。ともかくよろしく!」


 リースンが二人の背中を叩きながらそう言うので、僕もよろしくと挨拶を返しておく。するとドライゼンさんが尋ねてきた。


「よろしくなフウタ、レムニティ。で、二人とも剣士か?」

「剣と魔法、両方使えますよ。レムニティも同じです。風の魔法が得意ですね」

「魔法もいけるのか……確かにリースンは当たりを引いたかもしれないな」


 ドライゼンさんはニカっと笑いながら小さく頷いていた。続けてアーデンさんが握手を求めてきながら口を開く。


「風の、と言っていたけれど他の魔法も使えるの?」

「え? あ、はい。火と水は中程度までなら。土系統のは椅子やテーブルを作れる程度かな?」

「……それが本当なら、凄い。私は――」


 アーデンさんが眉をぴくりと動かしていた。凄いと言ったあと、話は続かずリースンに遮られた。


「あー、はいはい、とりあえず移動しましょ! 今から出発するわ!」

「え!? 今からかよ……確実に野営になるぞ」

「早い方がいいでしょ? 魔族だってのんびりしているわけじゃないし、一気に襲い掛かってくるかもしれないもの」

「確かにそうだね。僕達は慣れているから大丈夫ですよ」

「わふ!」


 ファングも尻尾をぶんぶん振って新しい人達に愛想を振りまいていた。アーデンさんはしゃがんでから顎を撫でまわす。


「お利口さん。可愛いわ」

「うぉふ♪」

「あ、いいなあ。私も後で撫でさせてね! そんじゃ、馬車のところへ行きましょ」


 リースンが先頭に立って歩き出し、僕達もついていく。はぐれないようファングは僕が抱っこ……と思っていたらレムニティが抱えていた。


「いいのかい?」

【構わない。こいつは人に慣れ過ぎているから子供についていきそうだしな】

「よく分かってるね」


 憑依していたのだから当然かと苦笑する。

 そのまま前の三人が話しているのを眺めながらしばらく歩いていると、ギルドの裏へ到着した。


「それじゃちょっと馬を連れてくるよ」


 ドライゼンさんが片手を上げて厩舎に行った。アーデンさんが荷台をチェックする中、リースンがドヤ顔で僕に言う。


「これがウチの馬車よ!」

「あ、うん」

「リアクションが薄くない!? 歩き旅なら嬉しいでしょうに」

「あー」


 リースンが紹介してくれたのは僕達も使っていたような馬車だったから特に感動する場面でもない……

 だけど彼女は僕達が歩きでここまで来たと思っているからこの反応も当然かな。

 まあ、ここまでの経緯を話す必要は無いし、適当に合わせておこう。


「いや、いい馬車だなと思って言葉を失っていたんだよ」

「あ、そういうこと?」

【……リクみたいなことを言うようになったな】

「そ、そうかな?」


 ぼそりとレムニティがそう言う。

 確かに言いそうだなと思うし、話を合わせることができるのもここまでの経験だ。前の僕だと狼狽えていたと思う。


「連れて来たぞ。早速行こう」

「またよろしく。あ、この子達はアストロとエブリイよ」

「いい馬達だね。よろしくアストロ、エブリイ」

「わふわふ」


 僕が撫でると二頭は気持ち良く鳴き、ファングが興味を示していた。レムニティが近づいていくと、ファングが二頭に鼻を鳴らす。


 だけど――


「わふーん……」

「どうしたんだ?」


 すぐに尻尾を垂らしてレムニティの肩に顎を置いた。


【気にするな。ちょっとがっかりしただけだ】

「そんなことあるんだ。そういえばその子の名前は?」

「ファングだよ。ほら、アストロとエブリイとも仲良くしような?」

「わん」


 がっかりしていたファングの背中をレムニティが撫でていた。どうやらハリソンとソアラだと思っていたようだ。

 だけど違うと分かり残念がっていた。


「よく分からないけど、可愛いからいいわ! ドライゼン、すぐ出発よ」

「おう」


 そんなこんなでようやく出発となり、馬車がゆっくりと動き出す。御者にドライゼンさんが座り、僕達は幌付きの荷台に乗り込んだ。


【ここからどれくらいでロクニクス王国へ到着するんだ?】

「お、珍しくたくさん喋ったわね。そうね、国境まで二日、そこから王都まで十日ってところね」

「と、遠い……」


 とはいえ最後の将軍を止めておけば後はみんなを探すことに集中できる。急がば回れと思っておこう。

 町の風景を見ながらそんなことを考えていると、やがて町の外へ出た。


「ギルドに挨拶しなくて良かったの?」

「まあ、私達がロクニクス王国の人間でこっちの目的は教えているから問題ないわ。さっきも言ったけど、この国は魔族が消えたからスカウトを許してもらった感じね」

「イディアール国の陛下に親書を持って行ったの」

「へえ、それは懐が深い方だね」

「ルドガー陛下は人格者だからなあ」


 そういえばメイディ様がそんなことを言っていたなと思う。被害の程がどの程度あったのか気になるな。

 ブライクさんはレムニティと一緒でそこまで無茶をするような感じはしないけど。

 あ、それとビカライアも。


「僕達の他にも強い人を送り込んでいるんだよね?」

「そう。Bランクはもちろん、Aランク冒険者も数人行ってもらっているわ。最近まではイディアールもロクニクスも魔族と戦っていたから戦力を集中することができなかったから、今はかなりいい傾向」

「おお、アーデンも負けじといっぱい喋った……」

「そこを驚くんだ」

【……効果的な戦略だ。しかし――】

「レムニティ?」

【いや、なんでもない。まずは到着してから状況を確認しなければ】

「そうね! さ、急いで急いで! 私は他にも人を連れてこないといけないんだから!」


 リースンは御者台に居るドライゼンさんへそう言う。

 さて、別の国か……夏那がリクさんが居たりしないかな? そんなことを思いながら馬車に揺られるのだった。

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