牛鬼の対面

 翌日、鬼塚は再び雪之丞の高校へ行った。

 今回は、いちじくの母親が来る事になっていた。


 鬼塚は出川、石松の案内で面談室に入った。面談室には、すでにいちじくの母親が来ていた。

いちじくトーマス君のお母様ですか?私、何でも屋をやっております鬼塚と申します…」

 そう言って鬼塚は名刺を渡そうとすると

「は?何でも屋?なんで何でも屋さん?」

 いちじくの母親は、遮るようにきつい口調で言って鬼塚の手を振り払った。

「実は、息子さんの隣のクラスにいる皇雪之丞君から依頼を受けまして…」

「だいたいの話は、トーマスから聞いたわ。なんでうちの子を疑うの?」

いちじくさん、お話を聞いてあげましょう」

 石松はそう促すが、

「後、貴方、妖怪なんだよね。しかも牛鬼。」

いちじくさん、確かに私は妖怪ですが、依頼者の方の話を聞いて今まで仕事をしてきました」

 鬼塚は淡々と話した。

いちじくさん、落ち着いてください」

 石松が宥めた。

「しかもさっき言ってた皇雪之丞君?貴方の部下の弟じゃない!依怙贔屓だわ!本当は、その雪之丞の妄想よ!」

 いちじくの母親は、ヒステリックになった。

「この化け物!」

 いちじくの母親はそう言って近くにあったペンを鬼塚に投げつけた。

 出川と石松が止めたが、いちじくの母親は、まだ鬼塚に物を投げつけていた。

「うちのトーマスが何で他所のクラスの物を盗むのよ!」

いちじくさん、息子さんがホットケーキミックスを取っている所を見てる生徒さんがいたから私はそれを調べて本当に息子さんが盗んだのであれば、それを返して貰うのが当たり前なんですよ!」

「やい!化け物!こうしてやる!」

 そう言っていちじくの母親は、鞄から鋸を出して

「これで轢き殺してやる!!」

 いちじくの母親は鋸を鬼塚に向けた。

「お、鬼刃…」

 鬼塚の顔色がどんどん悪くなった。

 石松はいちじくの母親を必死で止めた。

いちじくさん、落ち着いてください!」

 石松は出川に

「出川先生!警察呼んでください!」

「は、はい!」

 そう言って出川は面談室を出た。

 数分後、警察が到着し、いちじくの母親を取り押さえたが、鬼塚が倒れているのを見つけた出川と石松はすぐ救急車を呼び、鬼塚は病院に運ばれた。

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