第18話 アイス
「空くん、アイス食べたい気分じゃない?」
夕食後、自称幼馴染がそんなことを言ってきた。
「別に」
「アイス食べたい気分でしょ。ねえ」
意思が固いらしかった。
「冷凍庫に」
冷凍庫にもしかしたらあったかも知れない。
「無かったよ。確認してる。」
マジで食べたいらしい。
「じゃあ、諦めて下さい。」
次に買い物に行くときに買っておこう。
「何言ってるんですか?買って来て下さい。」
「何言ってるんですか?」
何で、こっちはそんなに食べる気がないのに買いに行かないと行けないんだよ。
「まあ、流石にこれはフェアじゃないです。なので私と勝負して負けたら」
自称幼馴染は、そう言って、決めポーズをしようとしていたので詠唱キャンセルすることにした。
「嫌ですよ。来週には買っておいてあげるから。」
「来週?遅いんですよ。今、食べたいんです。」
本当に意思が固かった。どんだけ食べたいんだよ。これは、幼馴染だったら…人生経験上、絶対に引かない。もう聞いたほうがはやい。
「はぁあ、それでどんな勝負するの?」
「ゲームで勝負しましょう。空くん。」
ゲームね。
「将棋か、囲碁か、オセロかトランプどれにしますか?」
「ゲーム機買いましたよね。空くん。それを使っていきましょう。」
「……良いんですか?」
絶対に勝負にならないと思う。
「もちろんです。空くん。」
彼女は、ご機嫌にゲームの準備を始めていた。
しばらくして、勝敗が着いた。
「……3回勝負ですから。空くん。3回勝負ですからね。勝った気にならないで下さい。」
彼女はそう言いながら、思いっきり暴れていた。本当に彼女の服装が今日ズボンで良かったと思う。
「良いけど」
いや、だってね。
2回戦終了
「やっぱり、5回勝負ですから。まだですよ。ここから私が3連勝するからね。」
彼女は、顔を膨らしながらそんな風に僕に啖呵を切ってきた。しれっと5回勝負にして、それで…まあ、愛嬌があるのだろう。
「まあ、頑張って下さい。」
3回戦終了
「……大人げない、悪魔。私高校生ですよ。JKを容赦なくボコボコにする成人男性なんて最低」
彼女は、諦めたのか、ゲーム機を片付け始めた。幼馴染は、ゲームとかは好きだった、でも、下手だった。すごい、下手だった。
「何その誤解しか生まない。発言。」
「……買いに行きますよ。もう。」
彼女は、下を向きながらそうつぶやいた。これは、シンプルにゲームに負けて悲しいのだろう。
「……はぁ。良いよ。買いに行くから。危ないでしょ、夜だし。まあでも僕のアイス代金も払えよ。」
よく考えれば、彼女一人でこの時間外に出すのはリスキーだった。だから、最初から買いに行く選択しか無かった。
「…まあ、空くんがどうしても行きたいらしいので譲りますね。」
彼女は、嬉しそうに、少し笑っていた。素直に感謝してほしいものだ。
別に良いけど。
それから、財布からまあまあな額のお金を持ってきて僕に渡した。
「金額多くね?そんな要らないですよ。」
「ふっ、どうせなら高級カップアイスを買って来て下さい。ストック分もですよ。空くん」
彼女は、そう言って、親指をグッドマークにした。
「了解しましたよ。帰って来るまで勉強してて下さいよ。君がちゃんとしないと僕も、有咲さんに怒られるんですよ。」
そう言いながら、お金を受け取り玄関に向かった。
「良い子にして、待ってますね。空くん。」
そんな事を言っているが、少なくとも良い子は、アイス欲しいって駄々をこねないと思う。
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