第15話 奇遇1
「えっ、空さん」
和菓子屋で高校の同級生に出会った。
「あっ、有咲さん。奇遇ですね。」
最近、有咲さんの話しが出たので本当に奇遇だった。彼女の見た目は高校時代と変わりが無くて全く老けて無かった。なんか自分だけ老けた気がして、少しテンションが下がった。
「お久しぶりです。君の喫茶店に行くとか言ってたのに行けなくてごめんなさいね。」
「ああ、大丈夫ですよ。来た時にボッタくるので」
通常の3倍ぐらいを請求してやろうかな、はは。
「早く行きますよ。それでどうして和菓子屋に」
「来客があるので、お茶菓子いるなって。自分で作っても良かったんですけどね。なんか和菓子かなって」
来客=お茶を出すの方程式が成り立っている。お茶を出すなら和菓子の方がいいだろう。
「奇遇ですね。空さん。私も手土産を買いに来たんです。」
本当に奇遇だった。
そう言えば、先生だからいまの時期、家庭訪問なのだろうか?まだ家庭訪問とかあるんだ。
「ここら辺の家庭訪問ですか?」
「そう家庭訪問?まあそんな感じのことをするんですよ。」
高校時代の同級生が仕事しているのか。なんか感慨深い。
「へぇ」
いつもならもう少し無駄話をするかも知れないが今日は時間が無かった。
「「ではこっちなので」」
そう言って指と声が重なった。
「「奇遇ですね。」」
無駄話を延長する事になった。
「そう言えば結局車の免許は取ったんですか?」
急に意味の分からない事を言われた。
「取ってない。車はやっぱり無理だよね。」
車とか15年間乗っていなかった。だから修学旅行とかの外に行く系の行事は全てズル休みをしていた。
「まあ、そうですよね。車乗れないですよね。」
有咲さんは、そう言って不思議そうな顔をしていた。
「うん、まあ。えっ何が?」
「ああいえ、前田さんに再会して、なんかよく最近会うんですけど。」
最近よく会う?……ストーキングでは無いのか?いやそんなまさかな…あり得るか。あれだけゆっくり距離を縮めた方が良いって言ったのにな。
「……大丈夫ですか?」
思わず心配してしまった。
「えっ、ああ、いや高校の事はもう大丈夫ですけど。」
解釈が違うからストーキングはないと。
「あっ、いや。はい」
「この前、今度、君と私と前田さんで何処かにドライブに行かないかって」
うん?あいつ何言ってるの?ああ、いや多分、思わずドライブに誘ったけど、ひよって僕の名前出して誤魔化したのか。
「ああ、なるほど」
「何で空さんが車乗れないのに嘘を。」
「ああ、なるほど…忘れたたんですよ。」
とりあえず助け船を送っておいた。僕も巻き込まれるならもっとちゃんと真剣にあいつにアドバイスを送ろうと思う。
「空さんが車乗れない事を?バカなんですね。」
ああ…
「ははは、では僕着いたので」
これ以上会話を出来る気がしなかった。『バカなんですね。』にどんな返しをしてもあいつの評価を下げてしまう気がした。だから家にたどり着いてラッキーだった。
「えっ、ここですか?」
「はい。喫茶店の場所分かって良かったですね。」
これで今度暇な時にやって来るだろう。儲けが増える。
「本当にここですか?」
彼女は驚き目を見開きながら珍しく大きな声だった。
「ええ、はい。えっ?」
何の確認?
「ははは、奇遇ですね。私の目的地もここなんですよ。」
うん?
家庭訪問
高校教師
今日
ここ
つまり、有咲 めい。僕の高校の同級生で友人が自称幼馴染の担任だった。
「……き奇遇ですね。」
笑って誤魔化すしか無かった。
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