生憎、使用済みでして。
@Amayayaya
第1話
生まれたときはみんなもってるのに、だんだんと失われていくものってな~んだ。
正解は、処女でした~。
……え? 男は違うだろって?
いやいや、男にだって穴はあるだろう?
……いや、そもそも男のことなんて俺はどうでもいいんだ。
俺は今、処女の尊さについて説いている。
昔は結婚するまで処女であることが当たり前で、経験は今の夫とだけ、というのも珍しくなかったようだ。
初夜の翌朝に血の付いたシーツを飾ったなんていう話も聞いたことがある。
しかし、現在はどうだろう。
結局お前は何が言いたいのかって?
……妹に、彼氏ができたようだ。
「うわああああああーーーーーーー!」
俺は妹の部屋で開封済みのコンドームの箱を見つけてしまい、思わず叫んでしまった。
「ちょっとなにお兄、うるさいんだけど」
俺の声に反応した妹が声をあげた後、こちらに向かってくるのがわかる。
先ほど妹の部屋とは言ったが、これは一部屋をパーテーションで区切っただけの簡易的なものに過ぎない。
区切られた反対側には俺の部屋、もといスペースがある。
つまり、俺と妹は同じ部屋で過ごしているのだ。
これには家庭の経済状況などなど複雑で致命的で運命的な理由があるわけだが、そんなことはどうでもいい。
俺は部屋の掃除をしていたのだ。
部屋といっても俺のスペースだけではすぐに終わってしまうし、そもそもつながっている隣が汚かったらあまり意味がないと思う。
なので、妹のスペースも一緒に掃除していたわけだが、その途中で俺は妹の部屋のごみ袋を交換してやろうとした。
しかし、そうやって無駄に気を利かせたばかりに、ごみ箱の底に隠していたのであろう例の箱を発見してしまった。
妹が部屋に入ってくる前に急いでごみ袋を元に戻す。
「なに? どうしたの?」
部屋へと入ってきた妹がやや切れ気味に尋ねた。
「い、いや、えっと、黒い物体が移動するのが見えてな。思わず叫んでしまった」
「それって……。 もぉ〜!」
実は最近気になってはいたのだ。
妹が急にメイクの勉強を始めたり、俺に勉強を教えてほしいと頼んできたり。
それらが始まったのはちょうど妹がバイトを始めた頃だったから、バイト先で出会いでもあったのだろうか……。
ああ……
妹に先を越された……
「なに? そんなに嫌なの? その、Gが」
俺が頭を抱えているのを見て、妹が尋ねてきた。
「あ、ああ。 そりゃあ嫌だろ。 怖くて今夜は眠れないかもしれない」
そう俺が適当に答えると、
「ふーん。 じゃあ、今日は一緒に寝てあげようか?」
からかうように妹が提案してきた。
「いや、普段から一緒に寝てるようなものだろうが」
そう、俺たちはこのパーテーションで区切られただけの同じ部屋、すぐ近くで布団を敷いて寝ている。
だから何をいまさら、というニュアンスで答えると、妹はこんなことを言い出した。
「い、いやそうじゃなくて。 このパーテーションをどかして布団を隣に敷いてあげようかって言ってんの。 ……!?」
妹は早口にまくしたてた後、自身の言葉に驚いたかのように口を押えた。
隣で寝るだと……?
何を考えているんだこの妹は。
初体験を済ませたことで、男に対しての距離感が変わったのか……?
なんだか釈然としないまま、俺はむきになって言い返した。
「本当か? そうしてくれるとありがたい。 いやーほんと助かるわー」
「い、いや……。 え、ええ、いいわよ! 私が一緒に寝てあげるわ!」
なんだか張り切った様子で妹は俺にそう言ったのだった。
そして夜。
初めての夜と書いて初夜なわけだが、現代においてこれは初体験の日を指すのだろうか、それとも結婚当日を指すのだろうか。
なーんてことを考えてたら俺はすぐに寝落ちした。
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