HP1-3 未練
彼女の未練はちっぽけだった。誰しもが絶対に持ってる感情だった。ただ、それが肥大化して、ブクブクと膨れ上がったもの小さな塊に凝縮しただけ。それがこの空間なんだ。彼女の、弟に対する見守っていたい…心配…愛情がこれなんだ。しかも口実付きだから厄介だ…彼女は今でも約束を果たそうとしてる。生前に走馬と交わした約束を。
「なんか~誰かとお喋りするのすっごく久しぶりだな~。あ!ねえねえ椿ちゃん、私たちってもう友達だよね!」
「え?そう…なの?」
「多分そうだよ!私の独自の見解では、お互いの事を知り合えたら友達の第一歩!もう一歩出てるよね」
そういうものなのかな…?生前では友達いなかったのかなって失礼なことをわたしは思った。
「待って、お互いのってことは…私は話したけど、椿ちゃんからなんも聞いてないよね!」
「あ、たしかに。でも、わたしは何も話すようなことも、特に未練もないし…」
「未練とかそんなドロドロしたやつじゃなくていいよ~。それよりも私は椿ちゃんの小ちゃい頃の話とか聞きたいな~」
真っ白な雲の様な床に寝転がり、足をバタバタさせながら彼女は無邪気に喋る。
「わたしの子どもの頃の話なんて聞いても面白くないよ。だってほとんど病院だもん」
「だからこそだよ!病院の中で椿ちゃんは何をしてたのかな~とか、どういう気持ちだったのかな~ってずっと思ってたんだ。何せ私も走馬と同じように、好奇心とかに全振りしてるからね」
あの知りたがりはお姉さん譲りだったんだ。でも、走馬はお姉さんとは少し違って、他の心もあったと思う。でも、走馬と同じようにするなら…
「別に面白い話じゃないけど、あなたの見解の検証のために協力してあげる」
「やったー。その強気な感じ…椿ちゃんだ!」
「ちなみにあなたじゃなくて、楓って呼んでね」
「あ、うん」
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