リースター・カレッジへようこそ!~訳あり一流魔術師は、魔法学院で教師になって真面目で一途な王子を魅了する~

もちマロ

第1章 リースター・カレッジへようこそ!

プロローグ ~舞踏会にて~


 煌々とした明かりが満ちるホールの中心で、一組の男女が踊っていた。


 夜空を模した青いドレスを着た令嬢と、彼女を大事そうにその腕に抱く長身の紳士。


 二人は優雅にワルツの弧を描き、会場中の視線を釘付けにしていた。



 男ははにかむ。

 腕の中の愛おしい令嬢に。

 その髪も、そのドレスも、いま自分とこの時を過ごすためだけに用意されたかのような美しさに、見惚れ、そして目眩のしそうな幸福に酔いしれる。


 今すぐ、その唇に口づけたい。

 口づけて、突然のできごとに驚き、戸惑い、真っ赤に染めた頬と潤んだ瞳で見上げる彼女を独占したい。



 そんな自分の胸の内さえ知らず穏やかに微笑む令嬢に、男は――――王子ミリウスはその長身を折った。



 彼女の耳元にそっと口を寄せて――――そして囁きかける。




「とても―――――綺麗だ」




 不意打ちに真っ赤になる令嬢に、またしてもその瞳を細めて、王子ミリウスは会場中を睥睨する。





 ――――これで、わかっただろう――?



 ―――誰が、誰に、恋をしているのか。



 お前たちが、誰の想い人に手を出そうとしていたのか――――よく、思い知るといい。




 会場中にはびこる、彼女に邪な思いを抱く男たちに。王子は、再度腕の中の令嬢をそっと引き寄せる。



 愛おしい。


 甘く、かぐわしく、自分を酔わせて、溺れさせて仕方のない令嬢に。


 これ以上ない幸福の視線を注ぎながら、誓うのだ。





 ――――彼女と共にいる未来のためならば。


 ――――どんなことでもしよう。


 ――――たとえ、何を引き換えに差し出しても――――。



 もう手放すことなどできそうにない甘い幸福を前に誓うのだった。




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