・【解説】

 今回のお話は、怖いというよりは悲しいお話でした。


 人生を長く過ごせば過ごすほど、知り合った人の死というものを経験することになります。あれが最後に言葉を交わした瞬間だったと気づくのはいつも後になってからです。知らなければ彼女は生き続けました、少なくとも彼の心の中で。しかし知ってしまったが最後、もう彼女の今を想像することはできません。もうこの世にいないのですから。ある意味でそれは、彼女が殺されてしまったと言えるでしょう。


   ◆


「なぜ頑張らなければならないのだろう?」そう心の中で思ったことがある人は多いと思います。部活の練習とか、受験とか、仕事とか、何かに挑戦する瞬間はとくにそうです。

 その理由はたくさんあると思いますが、個人的にしっくりくる理由は『後悔しないため』です。


 きっと頑張らなくても人生はどうにかなると思います。部活の大会だって、多くの人は一位を目指して頑張ると思いますが、別に一位を取れなかったところで死ぬわけでもなければ、人生が終了するわけでもないでしょう。受験だって、絶対ではないはずです。それでも頑張らなければならないとするなら、後悔したくないからです。過去はどんな人間だって変えることができませんから、一度過ぎてしまえばそこで終わりです。後になって悔やまないために全力を尽くし、たとえ結果が振るわなくてもそこから前を向けるはずです。

 下手に余力を残し、それを使っていたらいい結果が得られたかもしれないと嘆くよりかは健全だと思います。


 彼は後悔さえできないと思います。それをするにはあまりにも時間が経ちすぎているからです。それって怖くないですか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る