28 「帰省」

 それは、とある八月のことでした。

 ある男の子が、両親の実家に家族で帰省した時のことです。男の子が一人で街を散歩していると、大きな通りを挟んだ向こう側で行列のできているラーメン屋を発見しました。

 男の子は大のラーメン好きで、食べてみたいと思いました。

 その日、帰宅した男の子は父に頼んでみることにしました。


「ねえ、父さん」

「なんだい?」

「今日散歩してたらさあ。なんか美味しそうなラーメン屋見つけたんだよねえ。ねえ、行こうよ今日」

「今日は無理だな。もう晩飯の準備しちゃってるし。また今度な」

「ちぇー」


 男の子は少し不満でしたが、今度行けるというのでその場は我慢することにしました。


 それから数日が経ったお昼です。二人はそのラーメン屋に行くことになりました。

「ほら、準備しろ」

「やったー!」

 しかし実際に行ってみると、店はやっていませんでした。

 店の中が真っ暗です。

「今日はお休みか。残念だったな」

「ちぇー」

 二人が落胆していると、近くにいた見知らぬ地元の人が声をかけてきました。

「残念だったねえ」

 その言葉に、父親が対応します。

「ええ、でも仕方ないですねえ。明日はやってますか?」

 すると地元の人は言いました。

「いや。もうその店は潰れちゃってるから無理だよ。店主の方が亡くなちゃってね。確か二ヶ月くらい前だったかな。美味しいのはもちろんのこと優しい人でね。惜しい人を亡くしたよ」


 がっかりした二人は、近くのファミレスに向かうことにしました。

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