9「死因に関する占い」

 ある日、私は街角で占い師という老人に出会った。

 その占い師は、人がいつ、どんな死に方をするのかを占うと言うのだ。そこで私は、興味本位で自分の死因を聞いてみることにした。

 老人は禍々まがまがしい手つきで何やら魔具をあやつると、ぶつぶつと呪文のような言葉を唱え始めた。

 そして、か細くしわがれた声で二言だけ、ぼそりと呟いた。

 それによると、どうやら私は三年後の七月七日に溺れて死ぬらしい。

 その時の私はその事を本気にしておらず、大して気にもしていなかった。


 月日は流れ、私が死ぬとされる日がやって来た。

 さして気にしていなかった私だが、改めて意識し始めると途端に不安が募り始めた。一応念の為、万が一ということもあるし、何もしないよりはマシだろうと考えて、私はあらゆる可能性を考慮し、対策を講じることにした。

 その日は一切の飲み物を口に入れず、( 水分は果汁多めの果物を取ることにした。)お風呂に入らないのはもちろんのこと、水場の近くには近づかないようにした。

 恐れるべきは「液体」で、それ以外で死ぬことはない。まあこれもその占いが当たっているという前提なんだけど……。


 私は今、家の外に出て、歩いて移動している。

 何が原因となるかわからない以上、外を出歩くのは危険なのだろうが、どうしても外せない用事ができてしまっていた。

 命には変えられないと思うだろうが、生き延びるのを仮定するのであれば外すことはできない、そんな用事であった。


 でも実際はどうなのだろうか?

 向かう先の近くに川があるが、近づくつもりは毛頭ない。車に乗る予定もないから、「運転手が突然気絶して制御不能になり川に突っ込む」、なんて事もない。車に轢かれて吹き飛んだ先が川だった、とかの方がまだ可能性としてありそうだ。もっともその場合、死因は別になりそうだが。


 ……ん? まてよ……そうか、まずい! その可能性があった!

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