第23話

6.透き通る季節の中で



着いたのは、綺麗な夜景の見える高台だ。


「わぁっ」


地平線の彼方まで広がるダイヤモンドの輝きのような光に、少女は歓声をあげた。


最後に今日一番の笑顔が見られて嬉しい。


その顔を見て、思い出した。10月のある日々のことを。


そしてそれは10月を繰り返していた本当の理由だと言うことに気がついた。



秋晴れの続くとある日、小学生だった僕の前に転校生が現れた。


薄茶色の長い髪の白いワンピースのよく似合う女の子。


最初は清楚で静かな印象だった。しかしそれはすぐに違う印象になった。


隣の席になったこともあって、班行動をしている内に自然と仲良くなっていった。


学校の友達との遊びにも加わるようになって、やがていつも一緒にいるようになった。


かけがえのない、面白くて元気な子だと思うようになった。


そんなある日のことだ。


それが変わってしまったのは。


鮮烈な出来事に未だに目を背けている。


いつものように遊んでいたその日、夕方のチャイムが鳴ったので帰ろうとしていた。


夕焼けをバックに、少女がこちらを振り返る。


「蒼空くんは私の味方だよね、裏切ったり、しないよね」


その日は何も考えず、僕は、うん。


とだけ言った。


その女の子は次の日から、消息を絶った。


家出をしたらしい少女は警察に捜索願いが出され、1週間後に家路に着いた。


帰ってきた少女はすぐに転校してしまい、何も説明の無いまま僕の目の前からいなくなってしまった。


何も、言わずに。


いきなり大切だった少女を失った僕の、大事な1か月間がその10月だったのだ。


心のどこかで僕はずっと、忘れられない少女を探していたのかもしれない。



そんな気持ちを掘り起こし、知らず知らずの内に苦しんでいた僕を目の前の少女は気にせずに笑顔を向けてくれる。


今度こそ、手の届く少女を離したくない。

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