第9話 本の手掛かり

 私は、慶一と鈴の机のなかに、小さな一切れの手紙を入れた。

[今日の放課後、教室に残れ。

             中野 零夏より]

と、書いた紙を


 机のなかに、小さな一切れの手紙が入っていた。どうやら、零夏からの手紙のようだ。

 俺、斎藤 慶一は零夏と同じように、実体がない。佐藤 鈴と共に暮らしている。零夏と違い、俺たちには、前世やそれよりも前の記憶が残っている。

 なぜ残っているのかは、わからない。本来、前世の記憶は幽霊図書館に行かない限り、いや、行っても、実態を持たないものの歴史書は、基本的に見ることはできない。

 そんなことより、俺にこんな手紙を送ってきたってことは、鈴の机やロッカーの中にも、似たような手紙が入っているはずだ。

「鈴、お前の机かどっかに、こんなん入ってなかったか?」

俺は、鈴に例の手紙を見せた。

「あぁ、在ったよ、どうやってばれずに、残ろうか。」

「うん、もし、一樹や陽菜に帰り誘われたら、トイレに行くから、先帰れって、言っとこう。あいつらも、そこまで根強い訳でもないからな。」

「わかった。じゃあそれで。」


~放課後~

 (二人は、しっかり来るだろうか?普段、集団で帰っているから、流れに流されないだろうか?)

 そんなことを、私は、ずっと考えていた。でも、彼らのことだ、きっと来る。教室のドアが開いた。

「二人とも、遅すぎない?」

「ごめんね、陽菜たちが、案外頑固でさ。」

「そうか、それより今日来てもらったのは,,,,,」

「お前の本のことだろ?それなら、すでに調査済みだ。」

「えっ?」

「本を持っていったのは,,,,,」

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