第二十三話:モチャオーチからの追走(1)・死んじまうから来ないで下さいっ!
「え───」
反射でそれを即座に避けようと
だが、それでも間に合わない事を覚ったリンロは表情に絶望を
パッ!!
そんなリンロとモチャオーチの絶望間際で彼らの間に差し込まれたのは、トゥーチョが生成したリンロの全身を
「意に反するえ集団お助けシールドだっチョっ!!」
ダッ!!!
そのトゥーチョのアシストにまるで念入りに打ち合わせでもしたかのような素早い連動を見せたリンロは、無言で体勢を整え走り出していた。
「ッッッ──ッッ!!」
間一髪のところでモチャオーチの手から免れてから数分、ようやく口を聞ける程に余裕ができたリンロは
「トゥーチョぉぉぉ~~っ!!本ッッ当にありがとうっ!! 本ッッ当に助かったっ!!」
そう、らしくもない声を発してトゥーチョにお礼を言った。
「礼は後でちゃんとお前の余生から絞り尽くしてやるっチョから、今はチョりあえず2WCCから逃げ切る事に集中しろっチョッ!」
「…………分かってる。だけど……このまま逃げててもしまた何かあったらまずいし、とりあえず俺がリャンガだって事と一瞬でも触ったら死んじまうって事はちゃんと伝えねぇと」
そのリンロのごもっともな考えに対しトゥーチョは、表情を曇らせ乗り気ではないイマイチな反応を見せていた。
「言ってみてもいいと思うっチョけど……言うだけ無駄だと思うっチョよ? あとっ! 言うなら逃げながら後ろを振り向かずに前を見て言えっチョ!」
…………。
なんか……それじゃ独り言みたいじゃないか………。そもそも前だけ見てたらモチャオーチさんが後ろにいるかどうかも確認できないし(まぁ、トゥーチョに頼んで万が一にでもトゥーチョが動いている姿をモチャオーチさんに見られる訳にもいかないか……仕方ない)
「あのぉ~~ッッ!モチャオーチさ~~んっ! 今後ろにいらっしゃいますでしょうか~~ッッ!!」
「いますよぉ~~ッッ!! 何ですかなぁ~~っ!?」
相変わらずモチャオーチの声は優しくふわっとしているが、一定の距離感を保ち聞こえてくるそれが、なかなか一般的な常人では出せない程のスピードを出して走っていたリンロにとって少し怖くも思えた。
声の距離からするにまだ余裕がある事を察したリンロは、モチャオーチへの説明を試みた。
「あのっ! 少し事情があって今はこんな状況になってしまってるんですけどっ! まず昨日もさっきも騙すような事をしてしまって本当に申し訳がございませんでしたっ!
それで実は俺っ、今リャンガという生き物になってしまっていましてっ! 今の俺の身体に一瞬でも触れたらモチャオーチさん死んでしまうんですっ! だからもうこれ以上追ってこないで下さいっ! これは俺のですっ!!」
「…………。それもまた嘘ですかなっ? 謝ったからと言ってまた嘘をついていい理由にはなりませんぞぉ~~っ!!」
(っ!!?)
【リンロはモチャオーチからの信用を失った】
その事実が心に深く突き刺さったリンロは
「ぐぬぅほ~ッ! ごめんっ!トゥーチョぉ~~ッッ! 俺今までお前の事こんな気持ちにさせちまってたんだなぁ~~っ!!」
「チョふんッ、ようやくお前も理解したっチョか……。そうだっチョ、それこそが物事を正しく見る目のない奴に遭遇した時に避けては通れない理不尽っ【さあ歩け
うん、2WCCも丁度今多分お前にこんな目を向けているッチョ。こんな目をぉぉーーッッ!!!!<不信の眼差し>」
ゾクッ!!
その目を顔下から突き付けられたリンロがあまりのショックに震え出した。
「チョベベベベベベベベ────」
(クチョっ! リンロが震えすぎて酔いそうだっチョ!
この機にチョっと今までの事も含めて脅してやるつもりだったチョが、このままじゃオレ様の身がもたないっチョ! 少し早いッチョが
「チョいリンロっ! 落ち着うェっ!チョっ……。これを見るッチョ、これはっ世界中の人々がっいつもオレ様に当たり前のように向けてくる眼差し【信頼の眼差し】だっチョっ。
さあっ今お前を不信の世界から解き放ってやるッチョ!!<信頼の眼差し>」
パァァ~っ
その目を顔下から突き付けられたリンロは何もかも晴れたかのような穏やか極まりない表情を見せていた。
「ありがとうトゥーチョ、んでもってちょっと揺れるぞ」
「チョえ?」
ダッ!!!!!!!!!!
その一瞬爆発的な加速を見せトゥーチョの口から出た嫌な音を置き去りにして、リンロの姿はモチャオーチの視界から外れていた─────────
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