地下アイドルが目指す段階の一つに武道館がある。

ここでライブできるアイドルは、ほんの一握りだ。

災い転じて福となすとはよく言ったもの。

口実を与え、現場での友和を唱えた私は、

ネット上でバズることも増え、

そのおかげでオタクがさらに増えた。

切り抜きで共感される私の言葉たち。

ワズカの言う事わかるわー。

こんな推しが欲しい。

対バンかぶったら、ライブみてみるかー。

チェキ列長いけど待ったかいあったー。

みえる前ではありえなかった事がありえることになってきていた。

ただ武道館キャパには程遠い。

高速ファンタージュのワンマンライブが区民ホールで決まり、

グループ内で圧倒的1番人気になった頃に

私は、コンビニのバイトをやめた。

やっと本物のアイドルになれた気がした。

それでも私は気を緩めず、

バイトをしていたはずの時間を路上でビラ配り&チケット手売りに当てた。

チェキ残数を１０以上捕まえれば1日バイトするより多く稼げるからだ。

前は心が折れた路上のビラ配りも楽勝になった。

ビラ配り≒数字狩りだ。

チェキ残数０の天使は無視して、頭上の数字を探せばいいだけ。簡単なお仕事。

２桁の数字を見かけたときは猛ダッシュだ。

『今度、中野でワンマンがあるんで絶対に来てください。』

『今なら手売りのチケットが５００円なんです。』

チェキ残数という数字、

確かな未来が見えている私には余裕のキャッチセールスだった。

高ファンメンバーから

『ワズカさんて本当に人をみるめがありますよねー』と言われる。

話しかけた相手がチケットを買い、別のタイバンにも顔をだすからだ。

そう。わたしには、オタクをみる眼があるのだ。

そのおかげでここまでこれた。

ただ１００発１００中ではあまりに不自然なので

休憩がてら天使にも声をかけていた。

簡単な狩りだからこそ、単純に目にする数が重要になった。

私はなるべく人が多くかつオタクが多い場所を狩場にした。

第一候補地は秋葉原。

ただここは、オタク自体は多いがアニメ、

ゲームとはジャンルがドルオタとかぶっていそうで

かぶっていない場合が多かった。

ドルオタを見つけても既に主現場があり、

なかなか新規ファンになろうとはしない。

オタクもそれなりに現場での立場や絆ができると、

ゼロからスタートは面倒なのだ。

顔見知りのオタクだと無下にもできず、無駄な時間を取られる場合もあった。

DDとよばれるフリーの客は1桁ばっか。

この前の１桁は延々と自分の推しの良さを話してきた。

推しは○○はっぴーずのゆずというらしいが、知らない。

他のアイドルのことなんか気にしていなかった。

ただ、どこかでまたタイバンがあるのだろう、

その時までチェキ残数がなくならないように

ツイッターのフォローだけは頼んだ。

『タイバンする時は一緒に写真をとるね』

百合営業じゃない、顧客の共有化だ。

私はオタクを天使と1桁、2桁以上で分けてて覚えた。

いわゆる認知は2桁以上からだと思って貰いたい。

チェキ残数2とか3にボクのこと覚えてると聞かれても

覚えてるはずがない、シンプル脳内メモリー不足だ。

アイドルに自分を覚えてほしいオタクは

自分を覚えないと損だと、アイドル側に、強く認識させるしかないのだ。

自分にとって必要なら、ヒトは、イヤでも覚えるもんだ。

英単語や漢字、古文、暗記と一緒だ。

狩場第二候補地が渋谷、既にオタクの街だ。

ハチ公口をでれば地下アイドル、

メン地下が常にチラシをくばって新規客を探していた。

地価は往来する人数で決まる。

ここは常に人で溢れていた。

一見、アイドルと関係なさそうな

社会人に偽装したオタクや若者もノリで

当日ふらっとライブに来てくれたりする。

私の眼はそれを見破っていた。

あとメンズ地下アイドルと女性アイドルが

お互いのノルマ消費のためチケを交換招待したり、

営業としてオタクのフリを現場にくることがあった。

ただこれは、女側がハマることが多い。

やつらメン地下はアイドルとしてでななく

オンナとしてみてる(ド偏見)

あるいみ共食いの狩場だ。

天使の雑踏から数字を探す。

最近は、明らかに数字をみかける確率が上がって来ていた。

多くて2桁だが、私は養殖が得意なので、1桁でも狩りまくった。

この調子でどんどん私のオタクが増えて、ジャーアイドルになり、武道館ライブをやったら、いったいどんな光景になるのだろうか。

きっと数字の海なんだろうな。

その時はチェキ残数4桁、

1000オーバーの石油王オタクが最前に居たりするのだろうか。

いやいや、その頃にはチェキ物販なんかしていないよな。

数万人×１分なんて時間とれる訳がない。

グッズは生写真とか、私が直接介在しなくても

オタクは喜んでお金を出すようになっているハズ。

今より高い単価のタオルやTシャツには、直筆のサインすら入っていない。

ぎり私とわかる距離感、小さい私しかみれないチケットも、

bot競争や抽選で売り切れ。

仮にチェキ会をするとしても１枚１万とか？

それでも人気のため抽選で当たったオタクのみか、

後日時間をとってアフターパーティーという名目で

現金回収イベになるのだろうか。

きっと武道館は天使だらけだろう。

武道館ライブの時は、チケを高値で落札する必死系が、

1桁の数字で3や4とかになるのだろうか。

そんな中にぱたが、目減りした数十くらいでいたりするのかな。

ただ、ぱたのチェキ残数が

いまだ３桁以上あるということは、

武道館はほど遠い未来のようだ。

よかったな、ぱた。

まだ私と沢山チェキとれるぞ。