ヤンデレ姉が恋人……?

第22話

「……そりゃ、そうだよね。丹波だって男の子なんだから……彼女ぐらい、欲しいよね……」


「ど、どうしたの……姉さん?」


僕はようやく事の重大さに気づいた。

姉さんがちょっとおかしい。


冗談ぶっている場合ではなかったのだ。


姉さんは笑っているのか、それとも泣きそうになっているのか。

よく分からないグシャっとした表情をしていた。


「姉さん、ほんとどうしたの……? ちょっと座って休も?」


姉さんの肩と腰に手を添え、地べたではあるもののしゃがむようにうながす。


「ごめんね……丹波。わたしがみやま姉とお父さんやお母さんに強く言えなかったから……」


ひうち姉さんの眼から、涙がこぼれ落ちた。


「わたし……頑張ったんだけどな」


涙を両手でぬぐった姉さんは、ニコッと笑顔をみせた。


「丹波……苦労かけちゃって、ほんとにごめんね?」


姉さんが眼をほそめ、満面の笑みでそう告げた。


「ぜんぜん。たしかに苦労はしたけど、それでも楽しい人生だと思うよ」


ひうち姉さんには何の罪もない。

そもそも誰が悪いとか、そういうことなんかじゃないんだ。


「……ねえ、丹波?」


「ん?」


「苦労かけちゃった分、埋めあわせさせてほしいんだけど……いい?」


――埋めあわせ


おいしいものでも食べさせてくれるのだろうか。

僕は少しワクワクした。


そしてひと呼吸おき、姉さんは口をひらく。


「——今日からわたしたち、恋人同士ってことで……いいかな」

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