第52話 黒勇者の死
ヒノがいなくなると、ゴウは死に逝く黒勇者の前で横になった。
わしがもしこの者と同じ状況なら、同じ態度でいられるのだろうか。
痛くて苦しいはずなのに一言も声を発せず毅然としておる。
わしはこの年になっても死が恐ろしい。
黒勇者の中でも相当の実力の者なのであろうなあ。
だがわしが呼びかけても、反応せんかったくせに、ヒノ様には直ぐに反応しおったわ。
まあ、そういうものかもしれんのう。
ゴウは黒勇者を見ながら考えを巡らしていた。
「はーー、はーー」
ふむ、いよいよ危ないのかもしれんのう。
黒勇者の奴、呼吸が荒くなってきおった。
学校に着いたヒノはメイの授業が終るのを待った。
最後の授業が終ると話しかける。
「メイちゃん、帰りに寄りたいところがあるの」
「何処ですか?」
「ギルドです」
「……」
メイは露骨に嫌な顔をしているのだが嫌とは言わなかった。
「あなたに会いたいという黒勇者がいます」
「黒勇者ですか……」
ヒノは気が付いてしまった。
メイは行きたくない、でも私が誘っているのだから断れない。
ここでヒノは、メイを連れていくのは諦めた。
「メイちゃん、行きたくなければ、行かなくて大丈夫ですよ」
「……いいえ行きます。わたしも一つだけ聞きたいことがあります」
暗い格納庫をメイとヒノは黒勇者の元に歩いてきた。
黒勇者の檻の前に着くとゴウがいびきをかいて眠っている。
薄暗くて静かなこの場所は一人で退屈をしていれば眠たくなるのだろう。
メイは、黒勇者の檻の少し手前の物陰で赤い服に着替え透明になっていた。
「はー……、はー……」
黒勇者の呼吸が弱くなっていた。
「メイちゃん」
ヒノがメイの後ろから声をかけた。
メイはこくりとうなずくと、檻に近づき黒勇者に声をかけた。
「あのーー」
黒勇者は、目を開く。
だが、その目はうつろで果たしてメイに気が付いているのか。
そしてゆっくり目を閉じると、弱くなっていた呼吸が止まってしまった。
「……」
メイは振り返るとヒノの顔を見た。
ヒノは首をゆっくり左右に振った。
「クロちゃん、少しだけ生き返らせることは出来ますか」
「そんなことが、そんなことが……」
クロは弱々しい声を出していた。
「出来ないのですね」
メイが残念そうな顔になった。
「そんな事が出来ないわけがありません」
「はーーっ」
メイが少し怒っている。
「すみません、出来ます」
「じゃあやって下さい」
「……」
「うおっ、ばあちゃん」
黒勇者の目が開き、なにか口走った。
「あのーー」
メイが再度黒勇者に声をかけた。
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