第27話 走馬灯

避けられて焦った暴君は、素早く振り返った。

だがそれが早すぎた為、髭面マスクが反対向きになってしまい、目が見えなくなってしまった。


「うわあ目が見えねーー」


黒勇者は手加減無しで殴りだした。

三発,四発と殴られると、暴君は立ち上がることすら出来なくなった。


「ちーーっ、何やっているんだあいつ。やめろーー」


六発目は蹴りだった。

大きく蹴り飛ばされた暴君を空中で抱き留めた。

俺が抱き留めると暴君の姿が消えた。

そのまま、瓦礫の影に連れていった。

黒勇者は、突然の出来事に、まだ何が起きたかわからず、キョロキョロしている。


「お前、まさか死ぬつもりだったのか」


死にそうになっている暴君に聞いて見た。

少なくとも俺にはそう見えた。


「兄貴ー、おれは死ぬ気でなんか戦ってねえ。家族の敵討ちのつもりだった。……まだ結婚もしてねえのに死ねるかー」


そういいながら暴君の呼吸は弱くなっていく。


「わかった俺が結婚してやる」


「あにきー、馬鹿言っちゃあいけねー。俺は男だぜ」


「わかっている。俺は実は男が好きな男だ」


「良かったぜ。俺は女が好きな男は嫌いだったんだ。ホモだからな。約束だぜ……」


暴君の弱まっていた呼吸が止まってしまった。


「ファーーーン」


俺は初めて暴君の名前を呼んだ。


「生きているときは糞野郎でも、死んでしまえばただの仏さんだ。成仏して貰いてえ」


「なー、兄貴。式はいつにする」


「はーーーっ!!」


「ぎゃーーはっはっは、ガドの嫁を死なせんよ。わしを誰だと思うておる」


ばあさんが腹を抱えて笑っている。


「俺は、嫁じゃねえ。旦那だー。嫁はガドの方だー!!」


くそーー暴君めー

ややこしいんだよ。


「生きているなら、そんなもん、無しだ、無しー」


「だめだぜ、男と男の約束だ」


「ちっ、それより、やつを倒してくる」


俺は逃げてしまった。

ダーーめんどくせーー。


「このやろーー!!」


怒りを黒勇者にぶつけて、亀裂の中にぶっ飛ばした。

そのあとしばらく亀裂の前で呆然としていた。

色々ありすぎて、情報が整理できねえ。

のんびりぼーっと亀裂の中を見ていると、暗闇の中に無数の赤く光る点があった。


「あれが、全部黒勇者の目なら、この世界も終わりかな」


黒勇者の目の多さにあきらめの様なものを感じたとき、小学生だった時の記憶がよみがえった。

これは走馬灯って奴かな。




あれは小学二年生の時が始まりだった。

たまたま、まながいじめられていたんだ。

あいつどんくさいし、人見知りで、人と話すとき声が小さいし、その上クラス一の人気者あいの関心を独り占めしていたから、いつかそうなるんじゃないかと思っていたんだよな。

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